安息香酸エチルと塩化ベンゾイルの反応性の比較 89回薬剤師国家試験問12b
第89回薬剤師国家試験 問12b
安息香酸誘導体に関する記述bの正誤を判定してみよう。
b 第一級アミンとの反応性は、安息香酸エチルの方が塩化ベンゾイルより高い。
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第89回薬剤師国家試験 問12b 解答解説
b × 第一級アミンとの反応性は、安息香酸エチルの方が塩化ベンゾイルより高い。
→ 〇 第一級アミンとの反応性は、塩化ベンゾイル(酸ハロゲン化物)の方が安息香酸エチル(エステル)より高い。
酸塩化物(酸ハロゲン化物)はエステルよりも求核剤との反応性は高い。
カルボン酸誘導体(R1-CO-L)はアンモニアまたは第1級・2級アミン(HN(R2)R3)と反応すると、求核アシル置換反応の結果、アミド(R1-CO- N(R2)R3)が生成する。これをカルボン酸誘導体のアミノリシスと呼ぶ。ただし、第3級アミンは立体障害のため反応しない。また、エステルを基質とする場合は反応性が低いので加熱が必要である。
★ カルボン酸誘導体の種類間の求核アシル置換反応の反応性(反応速度)の比較
カルボン酸誘導体の種類間の求核アシル置換反応の反応性について、反応性の高いものから(反応速度が速いものから)、
酸ハロゲン化物>酸無水物>エステル>アミドと並ぶ。
一方、カルボン酸誘導体の安定性について、反応性の序列とは逆で、安定性の高いものから、
アミド>エステル>酸無水物>酸ハロゲン化物と並ぶ。
カルボン酸誘導体(R-CO-L)の求核アシル置換反応の反応性は、カルボニル炭素の正電荷(Cδ+)が強いほど反応性が高い。カルボニルの置換基(L)がsp2炭素のカルボニル炭素に電子供与性電子効果を与えるならば、カルボニル炭素の正電荷は弱まり反応性は低くなる。アルコキシド(OR)やアミン(NR)はsp2炭素に電子供与性共鳴効果を与えるので、エステルやアミドのカルボニル炭素は反応性が低い。
一方、カルボニルの置換基(L)がsp2炭素のカルボニル炭素に電子求引性電子効果を与えるならば、カルボニル炭素の正電荷は強まり反応性は高くなる。ハロゲンは電子求引性の誘起効果を与えるので、酸ハロゲン化物のカルボニル炭素は反応性が高い。