カルボン酸とグリニャール試薬の反応は酸塩基反応 94回薬剤師国家試験問8d
第94回薬剤師国家試験 問8d
下記のGrignard反応剤 (A: CH3CH2CH2CH2 MgBr) の反応の主生成物の構造の正誤を判定してみよう。ただし、すべての反応は終了後、適切な後処理を施してある。
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第94回薬剤師国家試験 問8d 解答解説
設問の図の主生成物の構造は誤りである。
設問の反応では、
酢酸が酸で、グリニャール試薬(Grignard反応剤)のAが塩基となる酸塩基反応が進行する。
グリニャール試薬(RMgX)では、Mgと結合した炭素が負電荷を帯びており(C:−)、カルボアニオン(R−)として振る舞い、基質に求核攻撃してアルキル化をする。
ただし、カルボアニオン(R−)は強塩基でもあるため、反応相手の酸性が弱くても、酸塩基反応が起こってカルボアニオンがHをプロトンとして引き抜き、炭化水素(RH)になってしまい、基質のアルキル化が起こらないことがある。
このように、グリニャール試薬(RMgX)は塩基性が強く、水とも酸塩基反応を起こして炭化水素(RH)となってしまうので、その取り扱いには非常に注意が必要なものである。
グリニャール試薬(RMgX)とカルボン酸との反応では、カルボン酸のカルボキシル基(COOH)の酸性度は比較的強いため、酸塩基反応が起こり、カルボアニオン(R−)がCOOHのHをプロトンとして引き抜く反応が進行し、結果、グリニャール試薬(RMgX)は炭化水素(RH)となり、カルボキシル基(COOH)はカルボキシラートイオン(COO-)となる。
カルボン酸は求核試薬と反応し、求核アシル置換反応を起こすが、求核試薬が比較的強い塩基性を示す場合、求核アシル置換反応ではなく酸塩基反応が起こることに注意が必要である。