塩化ベンゾイルとベンジルアミンの反応 103回薬剤師国家試験問104

第103回薬剤師国家試験 問104
ジクロロメタンを溶媒として、同じ物質量の塩化ベンゾイルとベンジルアミンとを室温で反応させたところ、塩化ベンゾイルのほぼ半量が生成物に変化したところで反応が停止した。この反応を再度行うにあたって、反応条件を改善して、塩化ベンゾイルのほぼ全量を生成物に変換したい。改善方法として適切なのはどれか。すべて選びなさい。

 

塩化ベンゾイルとベンジルアミンの反応 103回薬剤師国家試験問104

 

1 ベンジルアミンに対して1当量以上のトリエチルアミンをさらに加える。

 

2 ベンジルアミンの量を2倍にする。

 

3 塩化ベンゾイルの量を2倍にする。

 

4 ジクロロメタンの代わりにメタノールを溶媒として用いる。

 

5 ジクロロメタンの量を半分にする。

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第103回薬剤師国家試験 問104 解答解説

 

★ カルボン酸・カルボン酸誘導体を基質とした求核アシル置換反応

 

カルボン酸・カルボン酸誘導体を基質とする求核アシル置換反応については下記のリンク先を参照
カルボン酸・カルボン酸誘導体の求核アシル置換反応の概要

 

★ カルボン酸誘導体を基質とし、アミンを求核剤とする求核アシル置換反応ではアミドが生成(アミノリシス)

 

カルボン酸誘導体(R1-CO-L)に求核試薬として第1級・第2級アミン(NHR2R3)を反応させると、求核アシル置換反応の結果、R1-CO-Lにおいて脱離基(L)がアミン(NR2R3)に置換したアミド(R1-CO-NR2R3)が生成する。これをカルボン酸誘導体のアミノリシスと呼ぶ。
ただし、第3級アミンは立体障害が大きいことからカルボニルとは反応しない。

 

酸ハロゲン化物(R1-CO-X)とアミン(NHR2R3)の反応では、求核アシル置換反応(求核付加−脱離)の結果、アミド(R1-CO-NR2R3)とハロゲン化水素(HX)が生成する。

 

塩化ベンゾイルとベンジルアミンの反応 103回薬剤師国家試験問104

 

 

設問の反応では、塩化ベンゾイルとベンジルアミンが反応し、求核アシル置換反応(求核付加−脱離)の結果、アミドと塩化水素(HCl)が生成する。

 

塩化ベンゾイルとベンジルアミンの反応 103回薬剤師国家試験問104

 

問題文において、「同じ物質量の塩化ベンゾイルとベンジルアミンとを室温で反応させたところ、塩化ベンゾイルのほぼ半量が生成物に変化したところで反応が停止した」とある。これについて、副産物の塩化水素がベンジルアミンと酸塩基反応を起こし、ベンジルアミンがプロトン化されて消費されるので、塩化ベンゾイルのほぼ半量が生成物(アミド)となったところで停止したと考えられる。
このことを踏まえ、塩化ベンゾイルのほぼ全量を生成物(アミド)に変換する改善方法を考える。

 

◆ 1について
1 ○ ベンジルアミンに対して1当量以上のトリエチルアミンをさらに加える。

 

 副産物の塩化水素がベンジルアミンと反応するのを抑制するため、塩化水素が別の塩基と反応するよう仕向ければ良い。別の塩基として、ピリジンや水酸化ナトリウム、第3級アミン等が挙げられる。
トリエチルアミンなどの第3級アミンは窒素原子の電子密度が高くプロトン受容体として酸塩基反応を起こすが、窒素原子の立体障害が大きいことから求核反応の反応性は低いため、カルボニルに対して求核反応しない。よって、トリエチルアミンが出発物の塩化ベンゾイルを消費することはほとんどない。

 

 

◆ 2について
2 ○ ベンジルアミンの量を2倍にする。

 

 塩化ベンゾイルに対して1当量のベンジルアミンを反応させた時は半分の塩化ベンゾイルだけがアミドに変わったので、2当量のベンジルアミンを反応させれば全量の塩化ベンゾイルがアミドに変わると考えられる。

 

 

◆ 3について
3 × 塩化ベンゾイルの量を2倍にする。

 

 ベンジルアミンの不足によって塩化ベンゾイルが残っているので、この場合、塩化ベンゾイルを増やしても意味はない。

 

 

◆ 4について
4 × ジクロロメタンの代わりにメタノールを溶媒として用いる。

 

酸ハロゲン化物(R1-CO-X)とアルコール(R2OH)の反応では、求核アシル置換反応(求核付加−脱離)の結果、エステル(R1-CO-O-R2)とハロゲン化水素(HX)が生成する。

 

塩化ベンゾイルとベンジルアミンの反応 103回薬剤師国家試験問104

 

設問の反応において、メタノールを溶媒として用いると、塩化ベンゾイルとメタノールが反応し、求核アシル置換反応(求核付加−脱離)の結果、エステルと塩化水素(HCl)が生成する反応が並行して起こってしまい、アミドの生成量がさらに減ってしまう。

 

 

◆ 5について
5 × ジクロロメタンの量を半分にする。

 

この場合、溶媒の量を変えても意味はない。

 

★他サイトさんの解説へのリンク
第103回問104(e-RECさん)

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