芳香族化合物の求電子置換反応の反応機構 89回薬剤師国家試験問5c
第89回薬剤師国家試験 問5c
芳香族化合物に関する下記の記述の正誤を判定してみよう。
c 芳香族化合物は求電子剤と付加反応を起こしやすい。
第89回薬剤師国家試験 問5 解答解説
c × 芳香族化合物は求電子剤と付加反応を起こしやすい。
→ 〇 芳香族化合物は求電子剤と置換反応を起こしやすい。
★ 芳香環はπ電子豊富であり、求電子試薬(E+)と反応し、
水素(H)と求電子試薬(E)が置換する求電子置換反応を起こす。
芳香族化合物は求電子置換反応の基質となる。その機構は次の通り。
まず、芳香環のπ電子豊富な環炭素の1つに対して求電子試薬(E+)が付加し、中間体としてカルボカチオンを生成する。カルボカチオンとなることで、一旦、環は芳香族性を失いエネルギーが上昇して安定性が低下するが、求電子試薬が付加した炭素からHがプロトンとして放出されることにより、芳香族性を取り戻し、エネルギーが低下して安定な生成物となる。結果として、環炭素の1つにおいて水素(H)と求電子試薬(E)が置換したものが生成する。
芳香族求電子置換反応の1例として、
ベンゼンを基質とし、ニトロニウムイオン(+NO2)を求電子試薬とした
ベンゼンのニトロ化反応の様子を下記に示す。