ピリジンのニトロ化の反応性 ベンゼンとの比較 96回薬剤師国家試験問9d
第96回薬剤師国家試験 問9d
ピリジンに関する記述の正誤を判定してみよう。
d ベンゼンよりニトロ化されにくい。
第96回薬剤師国家試験 問9d 解答解説
d ○ ベンゼンよりニトロ化されにくい。
ピリジンやピリミジンなどのように窒素原子を含む6員環の芳香環をπ不足系芳香族複素環(π欠如系芳香族複素環)という。
“π不足系芳香族”と呼ばれる理由は、電気陰性度の高い窒素原子が電子を引き付けることにより、環の電子密度が低下するからである。
π不足系芳香族複素環は環の電子密度が低下しているので、芳香族求電子置換反応の反応性がベンゼンに比べて低い。
さらに、π不足系芳香族複素環では窒素原子の非共有電子対がsp2に入っていることから塩基性を示し、触媒となるプロトン酸やルイス酸と反応して塩を形成する。このこともπ不足系芳香族複素環で求電子置換反応の反応性が低くなる要因となる。反応を進めるには高温などの厳しい条件が必要である。
なお、配向性について、6員環のπ不足系芳香族複素環のピリジンの求電子置換反応は3位で起こりやすい。その理由として、ピリジンの共鳴構造式は、2位,4位,6位で正電荷を帯びるように描かれ、相対的に窒素原子と3位炭素の電子密度が高いためである。
ピロール,フラン,チオフェンといった5員環の芳香環は、6つのπ電子が5つの原子に分散されるため、ベンゼンに比べて環の電子密度が高い。よって、これら5員環の芳香環をπ過剰系芳香族複素環という。
π過剰系芳香族複素環はベンゼンに比べて環の電子密度が高いので、求電子置換反応の反応性はベンゼンに比べて高い。
なお、配向性について、ピロール,フラン、チオフェンなどの5員環のπ過剰系芳香族複素環の求電子置換反応は、主に2位で起こりやすい。その理由として、環に求電子試薬が付加して生成するカチオン中間体について、2位に付加したカチオンは3位に付加したカチオンよりも多くの共鳴構造式が描かれ、エネルギーが低く安定性が高いことが挙げられる。
インドールもπ過剰系芳香族複素環に分類され、芳香族求電子置換反応は3位で起こりやすい。