日本薬局方キシリトールの定量法 104回薬剤師国家試験問93
104回薬剤師国家試験 問93
日本薬局方キシリトール(C5H12O5:152.15)の定量法に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 キシリトールと過ヨウ素酸カリウムの反応で酸化数が変化している原子は、それぞれの分子中の酸素とヨウ素である。
2 Aは、チオシアン酸アンモニウム液である。
3 Bは、デンプン試液である。
4 Cは、CH3CHO(アセトアルデヒド)である。
5 Dは、HCOOH(ギ酸)である。
104回薬剤師国家試験 問93 解答解説
本問の定量法は、酸化還元平衡をキシリトールの定量に利用する酸化還元滴定である。
◆ 1,4,5について
1 × キシリトールと過ヨウ素酸カリウムの反応で酸化数が変化している原子は、それぞれの分子中の酸素とヨウ素である。
→ 〇 キシリトールと過ヨウ素酸カリウムの反応で酸化数が変化している原子は、それぞれの分子中の炭素とヨウ素である。
4 × Cは、CH3CHO(アセトアルデヒド)である。
→ 〇 Cは、HCHO(ホルムアルデヒド)である。
5 〇 Dは、HCOOH(ギ酸)である。
詳細は下記のリンク先を参照
キシリトールと過ヨウ素酸カリウムの反応と酸化数の変化 104回問93の1,4,5
◆ 2,3について
2 × Aは、チオシアン酸アンモニウム液である。
→ 〇 Aは、チオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)液である。
3 〇 Bは、デンプン試液である。
本問の定量法は、酸化還元滴定の逆滴定である。
反応の流れは下記の通り。
まずキシリトールを含む試料に過剰の一定量の過ヨウ素酸カリウム(KIO4)試液を加えて反応させる。
C5H12O5 + 4IO4- → 2HCHO + 3HCOOH + 4IO3- + H2O
反応後、ヨウ化カリウム(KI)を加え、
過ヨウ素酸イオン(IO4-)およびヨウ素酸イオン(IO3-)と
ヨウ化物イオン(I-)を反応させ、
ヨウ素(I2)を遊離させる。
反応式は下記の通り。
IO4- + 7I- + 8H+ → 4I2 + 4H2O
IO3- + 5I- + 6H+ → 3I2 + 3H2O
遊離したヨウ素(I2)をチオ硫酸ナトリウム液(Na2S2O3)で滴定する。
I2 + 2 S2O3 2- → 2I- + S4O6 2-
この反応は、ヨウ素(I2)を酸化剤、チオ硫酸イオン(S2O3 2-)を還元剤とする酸化還元反応である。
この反応で、1molのI2に対して2molのNa2S2O3が反応する。
この滴定では指示薬としてデンプン試液を用いる。
当量点前の未反応のI2が残存する間は、
I2とデンプンの電荷移動錯体により青紫色を呈する(デンプンのらせん構造にI2が入り込み包接化合物を生じ青紫色を呈する)。
当量点に達し、未反応のI2が無くなると、
I2とデンプンの電荷移動錯体が無くなり、青紫色が消失する。
★ 捕捉:0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム液に対するキシリトールの対応量
チオ硫酸ナトリウム液とキシリトールの対応関係は下記のように考えられる。
したがって、
キシリトールが1mol存在すると、
8molのチオ硫酸ナトリウムが消費される計算となる。
(キシリトールとチオ硫酸ナトリウムは、モル比1:8で対応)
以上より、
0.1 mol/Lチオ硫酸ナトリウム液1 mLのキシリトールの対応量は下記のように求められる。
0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム液1mLに含まれるチオ硫酸ナトリウムは0.1mmolである。
キシリトールとチオ硫酸ナトリウムは1:8で対応するため、
0.1mmolのチオ硫酸ナトリウムは1/8×0.1mmolのキシリトールに対応する。
本問ではキシリトールの分子量を152.15とするので、
1/8×0.1mmolのキシリトールの質量は、
1/8×0.1mmol×152.15 (g/mol)≒ 1.902mg
したがって、
0.1 mol/Lチオ硫酸ナトリウム液1mLに対するキシリトールの対応量は下記の通り。
0.1 mol/Lチオ硫酸ナトリウム液1 mL=1.902 mg C5H12O5
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