ヨウ素酸塩滴定によるヨウ化カリウムの定量法 85回薬剤師国家試験問29
85回薬剤師国家試験 問29
日本薬局方ヨウ化カリウムの定量法に関する次の記述について、[ ] に入れるべき数値はどれか。
「本品を乾燥し、その約0.5 gを精密に量り、ヨウ素瓶に入れ、水10 mLに溶かし、塩酸35 mL及びクロロホルム5 mLを加え、激しく振り混ぜながら0.05 mol/Lヨウ素酸カリウム液でクロロホルム層の赤紫色が消えるまで滴定する。ただし、滴定の終点はクロロホルム層が脱色した後、5分以内に再び赤紫色が現れないときとする。
この滴定の反応式は次のとおりである。ただし、KI=166.00とする。
1 1.660
2 3.320
3 4.980
4 16.600
5 33.200
85回薬剤師国家試験 問29 解答解説
正解は4の16.600である。
0.05 mol/L ヨウ素酸カリウム液 1 mL = 16.600mg KI
本問では、0.05 mol/L ヨウ素酸カリウム(KIO3)液1mLに対するヨウ化カリウム(KI)の対応量を求める。
0.05 mol/L ヨウ素酸カリウム液1mLに含まれるヨウ素酸カリウムは0.05mmolである。
ヨウ化カリウムとヨウ素酸カリウムの反応式は、下記のようにまとめられる。
2KI + KIO3 + 6HCl → 3ICl + 3KCl + 3H2O
上式より、ヨウ化カリウムとヨウ素酸カリウムは2:1で対応するため、
0.05mmolのヨウ素酸カリウムは0.1mmolのヨウ化カリウムと反応する。
本問ではヨウ化カリウムの分子量を166.00とするので、
0.1mmolのヨウ化カリウムの質量は、
0.1mmol×166.00 (g/mol)= 16.600mg
したがって、
0.05 mol/L ヨウ素酸カリウム液1mLに対するヨウ化カリウムの対応量は下記の通り。
0.05 mol/L ヨウ素酸カリウム液1mL = 16.600mg KI
★ 別解:式による対応量の計算
対応量(mg)は下記の計算式を用いても計算できる。
本問では、ヨウ化カリウムとヨウ素酸カリウムの対応について、
ヨウ化カリウム(目的成分)の化学当量は2、
ヨウ素酸カリウム(標準液の成分)の化学当量は1である。
ヨウ素酸カリウム液の濃度は0.5mol/L、
ヨウ化カリウムの分子量は166.00であるので、
対応量(mg)は式を用いて下記のように計算できる。
★ ヨウ素酸カリウム液を用いたヨウ化カリウムの定量法の原理
本問のヨウ素酸カリウム液を用いたヨウ化カリウムの定量法は、ヨウ素酸イオン(IO3−)を酸化剤、ヨウ化物イオン(I−)を還元剤とする酸化還元滴定であり、ヨウ素酸塩滴定と呼ばれる。
本定量法におけるIO3−とI−の反応は、以下の通り(1)と(2)の2段階で進行すると考えられる。
(1)I−の酸化によるI2の生成
強酸性条件下、ヨウ化カリウム(KI)にヨウ素酸カリウム(KIO3)を加えていくと、ヨウ素酸イオン(IO3−)によりヨウ化物イオン(I−)が酸化され、ヨウ素(I2)を遊離する。これが1段階目の反応である。
5KI + KIO3 + 6HCl → 3I2 + 6KCl + 3H2O …(1)
I2はクロロホルムに溶けるので、クロロホルム層がI2の赤紫色に染まる。
クロロホルムはI2を溶解し、
さらに、I2の生成と消失による溶液の色調の変化を鋭敏にする。
(2)I2の酸化によるI+の生成
さらにKIO3を加えると、塩酸酸性下、I2が酸化されてI+となり、
I+とCl −が結合してICl(塩化ヨウ素)を生成する。これが2段階目の反応である。
2I 2 + KIO3 + 6HCl → 5ICl + KCl + 3H2O …(2)
クロロホルム層のI2が全て消失すると、
クロロホルム層の色は、I2の赤紫色からIClの淡黄色に変わる。この時を終点とする。
(1)と(2)より、
ヨウ化カリウム(KI)とヨウ素酸カリウム(KIO3)の対応関係は
下記のように求められる。
(1)×2 + (2)×3 をして整理すると、
2KI + KIO3 + 6HCl → 3ICl + 3KCl + 3H2O
となる。