EDTAと金属の錯体を作りやすくする緩衝液の役割 105回薬剤師国家試験問92

105回薬剤師国家試験 問92の2
酸化亜鉛の定量法に関する記述の正誤を判定してみよう。

 

EDTAと金属の錯体を作りやすくする緩衝液の役割 105回問92の2

 

2 波下線部Aの操作は、エチレンジアミン四酢酸と金属の錯体を作りやすくするために行う。

トップページへ

 

薬剤師国家試験過去問題 科目別まとめ一覧 へ

 

薬剤師国家試験過去問題集 容量分析・滴定 一覧へ

 

 

105回薬剤師国家試験 問92の2 解答解説

 

2 〇 波下線部Aの操作は、エチレンジアミン四酢酸と金属の錯体を作りやすくするために行う。

 

塩基性にすると亜鉛イオンに対してEDTAが配位結合しやすくなるが、
pHが高すぎると、
金属イオンMに水酸化物イオン(OH-)が結合する副反応が起こりやすくなり、
金属の水酸化物( M(OH)n:別名ヒドロキシ錯体)の沈殿が多く生成してしまう。

 

よって、キレート滴定の定量法によっては、金属の水酸化物を生成しない程度に塩基性を保つ必要がある。
(EDTAを用いるキレート滴定でも、金属の水酸化物が生じやすい等の理由で、金属イオンと指示薬の組み合わせによっては酸性条件で行われる方法もあるので注意)

 

本問の定量法は、亜鉛イオンの定量で金属指示薬としてエリオクロムブラックTを用いるキレート滴定であるが、
この場合はpH7〜10で行われる。
よって、水酸化ナトリウム水溶液を加えた後、
pH10.7のアンモニア・塩化アンモニウム緩衝液を加えている。

 

また、アンモニア・塩化アンモニウム緩衝液は、
塩基性の適切な範囲での維持だけが目的ではなく、
以下で述べる補助錯化剤としての働きを期待されている。

 

亜鉛イオンに対して配位子としてアンモニアが結合するとアンミン錯イオンが生成する。
亜鉛のアンミン錯イオンは水溶性で安定度の低い錯イオンであり、後でEDTAを加えると、配位子置換により、
亜鉛−EDTAのキレートに置き換わる。
よって、アンモニア・塩化アンモニウム緩衝液を加えることにより、
あえて亜鉛イオンを水溶性で安定度の低いアンミン錯イオンとし、
水酸化亜鉛Zn(OH)2の沈殿を生じるのを防ぎ、
エチレンジアミン四酢酸と亜鉛イオンの錯体を作りやすくしている。

トップへ戻る