フェニレフリンの臭素液による滴定 反応式,対応量 84回薬剤師国家試験問29

84回薬剤師国家試験 問29
次の記述は、日本薬局方フェニレフリン塩酸塩の定量法に関するものである。
a〜dの正誤について、正しいものはどれか。

 

フェニレフリンの臭素液による滴定 反応式,対応量 84回薬剤師国家試験問29

 

本品を乾燥し、その約0.1 gを精密に量り、ヨウ素瓶に入れ、水40 mLに溶かし、0.05 mol/L 臭素液50 mLを正確に加える。更に塩酸 5 mLを加えて直ちに密栓し、振り混ぜた後、15分間放置する。次にヨウ化カリウム試液 10 mLを注意して加え、直ちに密栓してよく振り混ぜた後、5分間放置し、0.1 mol/Lチオ硫酸ナトリウム液で滴定する(指示薬:デンプン試液1 mL)。同様の方法で空試験を行う。

 

a ヨウ化カリウム試液を加えるのは、ヨウ素を遊離させるためである。
b 逆滴定なので、空試験の方がチオ硫酸ナトリウム液の滴定量は多くなる。
c 本品1モルに対し、3モルの臭素が消費される。
d 0.05 mol/L の臭素液1 mLはフェニレフリン塩酸塩の6.789 mgに相当する。

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84回薬剤師国家試験 問29 解答解説

 

a 〇 ヨウ化カリウム試液を加えるのは、ヨウ素を遊離させるためである。
b 〇 逆滴定なので、空試験の方がチオ硫酸ナトリウム液の滴定量は多くなる。
c 〇 本品1モルに対し、3モルの臭素が消費される。

 

d × 0.05 mol/L の臭素液1 mLはフェニレフリン塩酸塩の6.789 mgに相当する。
→ 〇 0.05 mol/L の臭素液1 mLはフェニレフリン塩酸塩の3.395mgに相当する。

 

以下、詳細

 

本問の定量法は、酸化還元平衡を定量に利用する酸化還元滴定である。

 

試料に一定過剰量の臭素液を加え、
試料中のフェニレフリンとBr2を反応させ、
フェニレフリンのトリブロモ体を生成する。

 

フェニレフリンの臭素液による滴定 反応式,対応量 84回薬剤師国家試験問29

 

 

この反応で、1molのフェニレフリンに対して3molのBr2が反応する。

 

過剰に加えた未反応の臭素Br2にヨウ化カリウム(KI)を加えると、
酸化剤としての強さは、Br2>I2であるため、
Br2がI-(ヨウ化物イオン)を酸化してI2を生成する。

 

Br2 + 2I- → 2Br- + I2

 

この反応は臭素(Br2)を酸化剤、ヨウ化物イオン(I-)を還元剤とする酸化還元反応である。
この反応で、1molのBr2から1molのI2が遊離する。

 

生成したI2をチオ硫酸ナトリウム液(Na2S2O3)で滴定する。

 

I2 + 2 S2O3 2- → 2I- + S4O6 2-

 

この反応は、ヨウ素(I2)を酸化剤、チオ硫酸イオン(S2O3 2-)を還元剤とする酸化還元反応である。
この反応で、1molのI2に対して2molのNa2S2O3が反応する。

 

この滴定では指示薬としてデンプン試液を用いる。
当量点前の未反応のI2が残存する間は、
I2とデンプンの電荷移動錯体により青紫色を呈する
(デンプンのらせん構造にI2が入り込み包接化合物を生じ青紫色を呈する)。

 

当量点に達し、未反応のI2が無くなると、
I2とデンプンの電荷移動錯体が無くなり、青紫色が消失する。

 

本定量法では、
試料にフェニレフリン塩酸塩を含まない空試験を行う。
本試験と空試験の滴定値は下記のようになると考えられる。

 

フェニレフリンの臭素液による滴定 反応式,対応量 84回薬剤師国家試験問29

 

 

★ 0.05mol/L臭素液のフェニレフリン塩酸塩の対応量の計算

 

1molのフェニレフリンに対して3molのBr2が反応する。
これに基づき、
0.05mol/L臭素液1mLのフェニレフリン塩酸塩の対応量を求める。

 

0.05mol/L臭素液1mLに含まれる臭素は0.05mmolである。
0.05mmolの臭素は1/3×0.05mmolのフェニレフリン塩酸塩に対応する。
本問ではフェノールの分子量を203.67とするので、
1/3×0.05mmolのフェニレフリン塩酸塩の質量は、
1/3×0.05mmol×203.67 (g/mol)≒ 3.395mg
したがって、
0.05mol/L臭素液1mLのフェニレフリン塩酸塩の対応量は下記の通り。

 

0.05mol/L臭素液1mL = 3.395mg フェニレフリン塩酸塩

 

 

★ 対応量の計算の別解:式を用いた計算
対応量(mg)は下記の計算式を用いても計算できる。

 

フェニレフリンの臭素液による滴定 反応式,対応量 84回薬剤師国家試験問29

 

本問では、フェニレフリンと臭素Br2の反応について、
フェニレフリン(目的成分)の化学当量は1、
臭素(目的成分と反応する成分)の化学当量は3である。
臭素液の濃度は0.05mol/L、
フェニレフリン塩酸塩の分子量は203.67であるので、
対応量(mg)は式を用いて下記のように計算できる。

 

フェニレフリンの臭素液による滴定 反応式,対応量 84回薬剤師国家試験問29

 

関連問題
酸化還元滴定 フェニレフリン塩酸塩の定量法の原理 97回問95

 

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