沈殿滴定 ファヤンス法の原理と吸着指示薬 103回薬剤師国家試験問97の2,4
103回薬剤師国家試験 問97の2,4
日本薬局方「生理食塩液」中の塩化ナトリウムの定量法に関する記述の正誤を判定してみよう。
2 Aに入るのは、フルオレセインナトリウムである。
4 滴定終点においては、過剰な銀イオンと指示薬からなる赤褐色の沈殿を生じる。
103回薬剤師国家試験 問97の2,4 解答解説
2 〇 Aに入るのは、フルオレセインナトリウムである。
4 × 滴定終点においては、過剰な銀イオンと指示薬からなる赤褐色の沈殿を生じる。
→ 〇 滴定終点においては、AgClを過剰となった銀イオン(Ag+)が取り囲み、そこへ指示薬のフルオレセイン(Flu−)が吸着して紅色の沈殿を生じる。
本問の定量法は、
生理食塩液中の塩化ナトリウムに由来する塩化物イオンを滴定するにあたり、
Ag+とCl−からAgClの難溶性塩を生成する反応を利用し、
指示薬として吸着指示薬であるフルオレセインナトリウムを用いる沈殿滴定である。
本問の定量法のように、
指示薬として吸着指示薬を用いる沈殿滴定法を、
ファヤンス法(Fajans法)と呼ぶ。
本問の沈殿滴定では、
試料の生理食塩液に硝酸銀(AgNO3)標準液を加え、
Ag+とCl−が反応してAgClの難溶性沈殿を生成する反応を定量に利用する。
滴定終点前の未反応のCl−が存在する間は、
AgClのコロイド粒子にCl−が吸着し、
コロイド表面は負に帯電する。
吸着指示薬のフルオレセインは、中性から塩基性条件下では、
酸性解離基からプロトンが解離して陰イオン型(Flu−)になっている。
Flu−は、Cl−に囲まれて負に帯電したAgClのコロイド粒子には吸着できない。
そのため、終点前の未反応のCl−が存在する間は、
溶液の色は遊離のFlu−の色の黄緑色となる。
滴定操作を続け、未反応のCl−が無くなり、
Ag+が過剰になると、
AgClのコロイド粒子の表面にAg+が吸着し、
コロイド表面は正に帯電する。
そこへ吸着指示薬のFlu−が吸着すると、
Flu−は吸着型の紅色を呈するようになる。
ここを滴定終点とする。
よって、滴定終点においては、
AgClを過剰なAg+が取り囲み、
そこへ指示薬のフルオレセイン(Flu−)が吸着することにより、
紅色の沈殿を生じる。