キレート滴定の逆滴定の原理とジチゾンの色 94回薬剤師国家試験問32b
94回薬剤師国家試験 問32
日本薬局方乾燥水酸化アルミニウムゲルの定量法に関する記述の正誤を判定してみよう。
本品約2 gを精密に量り、塩酸15 mLを加え、水浴上で振り混ぜながら30分間加熱し、冷後、水を加えて正確に500 mLとする。
この液20 mLを正確に量り、0.05 mol/L エチレンジアミン四酢酸二水素ニナトリウム液30 mLを正確に加え、pH 4.8の酢酸・酢酸アンモニウム緩衝液20 mLを加えた後、
5分間煮沸し、冷後、エタノール (95) 55 mLを加え、0.05 mol/L 酢酸亜鉛液で滴定する (指示薬:ジチゾン試液2 mL)。
ただし、滴定の終点は液の淡暗緑色が淡赤色に変わるときとする。同様の方法で空試験を行う。
b 指示薬のはじめの色 (淡暗緑色)は、Al3+とジチゾンとのキレートの色である。
94回薬剤師国家試験 問32b 解答解説
b × 指示薬のはじめの色 (淡暗緑色)は、Al3+とジチゾンとのキレートの色である。
→ 〇 指示薬のはじめの色 (淡暗緑色)は、遊離型のジチゾンの色である。
設問の定量法は、
Al2O3由来のAl3+をpH3〜5でキレート滴定の逆滴定で定量する方法であり、
この場合、金属指示薬としてジチゾンが選択される。
金属指示薬はキレートを形成している結合型と遊離型とで呈する色が異なる。
設問の逆滴定では、
Al3+に対して一定量の過剰なEDTAを加え、
Al3+−EDTAキレートの生成を完結させ、
EDTAの未反応分を酢酸亜鉛液で滴定する。
酢酸亜鉛液を滴加していくと、
Zn2+−EDTAのキレートの錯生成定数はZn2+−ジチゾンのキレートの錯生成定数より大きいので、
Zn2+−EDTAキレートが優先的に形成されていく。
未反応のEDTAが残存する限り、金属指示薬のジチゾンはZn2+とキレートを形成できない。
この間、溶液の色はジチゾンの遊離型の淡暗緑色に染まっている。
未反応のEDTAがなくなると、
滴加されたZn2+はジチゾンとキレートを形成する。
そこが滴定の終点であり、その時、
溶液の色は遊離型ジチゾンの淡暗緑色から結合型ジチゾンの淡赤色に変わる。