フェニレフリン塩酸塩の定量法 97回薬剤師国家試験問95
97回薬剤師国家試験 問95
日本薬局方フェニレフリン塩酸塩の定量法に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
本品を乾燥し、その約0.1 g を精密に量り、ヨウ素瓶に入れ、水40 mL に溶かし、0.05 mol/L 臭素液50 mL
を正確に加える。更に塩酸5 mL を加えて直ちに密栓し、振り混ぜた後、15 分間放置する。次にヨウ化カリウム試液10 mL を注意して加え、直ちに密栓してよく振り混ぜた後、5 分間放置し、遊離したヨウ素を0.1 mol/L チオ硫酸ナトリウム液で滴定する(指示薬:デンプン試液1 mL)。同様の方法で空試験を行う。
1 本品1 モルに対して、3 モルの臭素が反応する。
2 臭素1 モルに対して、3 モルのヨウ化カリウムが反応する。
3 ヨウ素1 モルに対して、1 モルのチオ硫酸ナトリウムが反応する。
4 チオ硫酸ナトリウム液による滴定は、中和滴定である。
5 チオ硫酸ナトリウム液の滴定量は、空試験の方が多くなる。
97回薬剤師国家試験 問95 解答解説
1 〇 本品1 モルに対して、3モルの臭素が反応する。
2 × 臭素1モルに対して、3モルのヨウ化カリウムが反応する。
→ 〇 臭素1モルに対して、2モルのヨウ化カリウムが反応する。
3 × ヨウ素1モルに対して、1モルのチオ硫酸ナトリウムが反応する。
→ 〇 ヨウ素1モルに対して、2モルのチオ硫酸ナトリウムが反応する。
4 × チオ硫酸ナトリウム液による滴定は、中和滴定である。
→ 〇 チオ硫酸ナトリウム液による滴定は、ヨウ素(I2)を酸化剤、チオ硫酸イオン(S2O3 2-)を還元剤とする酸化還元滴定である。
5 〇 チオ硫酸ナトリウム液の滴定量は、空試験の方が多くなる。
以下、詳細
本問の定量法は、酸化還元平衡を定量に利用する酸化還元滴定である。
試料に一定過剰量の臭素液を加え、
試料中のフェニレフリンとBr2を反応させ、
フェニレフリンのトリブロモ体を生成する。
この反応で、1molのフェニレフリンに対して3molのBr2が反応する。
過剰に加えた未反応の臭素Br2にヨウ化カリウム(KI)を加えると、
酸化剤としての強さは、Br2>I2であるため、
Br2がI-(ヨウ化物イオン)を酸化してI2を生成する。
Br2 + 2I− → 2Br− + I2
この反応は臭素(Br2)を酸化剤、ヨウ化物イオン(I-)を還元剤とする酸化還元反応である。
この反応で、1molのBr2から1molのI2が遊離する。
生成したI2をチオ硫酸ナトリウム液(Na2S2O3)で滴定する。
I2 + 2 S2O3 2− → 2I− + S4O6 2−
この反応は、ヨウ素(I2)を酸化剤、チオ硫酸イオン(S2O3 2−)を還元剤とする酸化還元反応である。
この反応で、1molのI2に対して2molのNa2S2O3が反応する。
この滴定では指示薬としてデンプン試液を用いる。
当量点前の未反応のI2が残存する間は、
I2とデンプンの電荷移動錯体により青紫色を呈する
(デンプンのらせん構造にI2が入り込み包接化合物を生じ青紫色を呈する)。
当量点に達し、未反応のI2が無くなると、
I2とデンプンの電荷移動錯体が無くなり、青紫色が消失する。
本定量法では、
試料にフェニレフリン塩酸塩を含まない空試験を行う。
本試験と空試験の滴定値は下記のようになると考えられる。
関連問題
フェニレフリンの臭素液による滴定 反応式,対応量 84回問29
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