L−アラニンの定量法 108回薬剤師国家試験問98

108回薬剤師国家試験 問97−98
ある化合物が医薬品として適合するかどうかの判定は、分離分析、定性分析及び定量分析を駆使して行われる。次の記述は、日本薬局方L−アラニン(C3H7NO2:89.09)の純度試験(一部要約)及び定量法である。

 

108回薬剤師国家試験問98 L−アラニンの定量法

 

問97 
純度試験に用いた液体クロマトグラフィー(LC)に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 一般に、この検出器の光源にはタングステンランプが用いられる。
2 固定相は陰イオン交換体である。
3 移動相はAからEの順に、pH が大きくなる。
4 このLC は、プレカラム誘導体化法である。
5 アラニンとプロリンは同じ呈色物質を生成する。

 

問98 
定量法に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 試料95.67mg を量り取った場合、「約90mg」を量り取ったことにならない。
2 L−アラニンはアセチル化された後、過塩素酸と反応する。
3 この電位差滴定法では、指示電極にガラス電極を用いる。
4 本試験より空試験の方が、0.1 mol/L 過塩素酸の滴加量は少ない。
5 アに入る数値は4.455である。

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108回薬剤師国家試験 問97

 

下記のリンク先を参照
108回問97の解答解説

 

 

108回薬剤師国家試験 問98 解答解説

 

◆ 1について
1 × 試料95.67mg を量り取った場合、「約90mg」を量り取ったことにならない。

 

「約」とは、記載された量の±10%の範囲の量を意味する。
「約90mg」とは、81〜99mgの範囲の量を意味するので、
95.67mg を量り取った場合、「約90mg」を量り取ったことになる。

 

なお、本問では、“約90mgを精密に量り…“とある。
「精密に量る」とは,
量るべき最小位を考慮し,
0.1 mg,0.01 mg,0.001 mg又は0.0001 mgまで量ることを意味し、
これは、記載された質量の1000分の1の桁まで量ることを示す。

 

したがって、“約90mgを精密に量る“とは、
81mg〜99mgの範囲で,化学はかりを用いて0.001 mgの単位まで量ることを意味する。

 

関連問題
約1.5gを精密に量るとは 102回問96の5

 

 

◆ 2,5について
2 × L−アラニンはアセチル化された後、過塩素酸と反応する。
酢酸を加えているが、L−アラニンはアセチル化されない。

 

5 × アに入る数値は4.455である。 → 〇 アに入る数値は8.909である。
0.1 mol/L 過塩素酸1mL = (ア:8.909)mg C3H7NO2

 

本問の定量法は、酢酸を非水溶媒とする非水滴定である。
非水滴定とは水以外の溶媒を用いる酸塩基滴定であり、
水中では水の自己解離や生成する塩の加水分解の影響で終点が検出されにくい弱酸・弱塩基を分析対象とする場合や、
試料が水に溶けにくい場合でも、非水溶媒を用いると酸塩基滴定が可能となる。

 

本問の定量法は、
酢酸溶液中、L-アラニンを弱塩基とし、それを過塩素酸で滴定する非水滴定である。

 

108回薬剤師国家試験問98 L−アラニンの定量法

 

これは、CH3COOH2を酸、CH3COOを塩基とする酸塩基反応である。

 

以上より、L-アラニンと過塩素酸はモル比1:1で対応すると考えられる。

 

0.1mol/L過塩素酸液1mLに含まれる過塩素酸は0.1mmolである。
L-アラニンと過塩素酸はモル比1:1で対応するので、
0.1mmolの過塩素酸は0.1mmolのL-アラニンに対応する。
本問ではL-アラニンの分子量を89.09とするので、
0.1mmolのL-アラニンの質量は、
0.1mmol×89.09 (g/mol) = 8.909mg
したがって、
0.1mol/L過塩素酸液1mLのL-アラニンの対応量は下記の通り。

 

0.1mol/L過塩素酸液 = 8.909 mg C3H7NO2

 

★ 捕捉:式による対応量の計算
対応量(mg)は下記の計算式を用いても計算できる。

 

108回薬剤師国家試験問98 L−アラニンの定量法

 

本問では、L-アラニンの過塩素酸による滴定について、
L-アラニン(目的成分)の化学当量は1、
過塩素酸(標準液の成分)の化学当量は1である。
過塩素酸液の濃度は0.1mol/L、
L-アラニンの分子量は89.09であるので、
対応量(mg)は式を用いて下記のように計算できる。

 

108回薬剤師国家試験問98 L−アラニンの定量法

 

 

◆ 3について
3 〇 この電位差滴定法では、指示電極にガラス電極を用いる。

 

非水滴定で終点検出法として電位差滴定法を用いる場合、
参照電極には銀−塩化銀電極などを用い、
指示電極にはガラス電極を用いる。

 

終点検出法として電位差滴定法を用いる場合、
滴定法により、用いる指示電極が異なる。
各滴定で用いる指示電極は以下の通り。

 

中和滴定と非水滴定:ガラス電極
キレート滴定:水銀−塩化水銀(U)電極
沈殿滴定:銀電極
酸化還元滴定:白金電極

 

 

◆ 4について
4 〇 本試験より空試験の方が、0.1 mol/L 過塩素酸の滴加量は少ない。

 

本試験は本品の存在下で行われる滴定であり、
空試験は本品が存在しない状態で行われる滴定である。
空試験を行い、過塩素酸標準液が本品以外の物との反応で消費される分を調べる。

 

本問の定量法は、直接滴定法であるので、
以下に示す通り、本試験より空試験の方が、0.1 mol/L 過塩素酸の滴加量は少ない。

 

108回薬剤師国家試験問98 L−アラニンの定量法

 

 

★ 他サイトさんの解説リンク
108回問97,98(e-RECさん)

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