キレート滴定 アスピリンアルミニウム中のアルミニウムの定量法 87回薬剤師国家試験問32

87回薬剤師国家試験 問32
日本薬局方医薬品アスピリンアルミニウム(C18H15AlO9:402.29)中のアルミニウム(Al:26.98)の定量法に関する記述のうち,[  ]の中に入れるべき化合物名と数値の正しい組合せはどれか。

 

本品約0.4gを精密に量り,水酸化ナトリウム試液10mLに溶かし,
1mol/L[ a ]試液を滴加してpHを約1とし,更にpH3.0の酢酸・酢酸アンモニウム緩衝液20mL及びCu-PAN試液0.5mLを加え,煮沸しながら,0.05mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム液で滴定する。ただし,滴定の終点は液の色が赤色から黄色に変わり,1分間以上持続したときとする。同様の方法で空試験を行い,補正する。
0.05mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム液1mL=[ b ]mg Al

 

アスピリンアルミニウム中のアルミニウムの定量法 87回薬剤師国家試験問32

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87回薬剤師国家試験 問32 解答解説
正解は4であり、
a:塩酸
b:1.349である。

 

 

◆ [ a ]について
本定量法は、アルミニウムをEDTAで滴定するキレート滴定の直接法である。

 

本定量法の最初の操作で、試料を水酸化ナトリウム試液10mLに溶かしているが、
これにより、アスピリンアルミニウム中のアスピリンがサリチル酸ナトリウムに加水分解されて溶解する。
次に、pHを酸性にするために、1mol/L塩酸試液を滴加してpHを約1とし,更にpH3.0の酢酸・酢酸アンモニウム緩衝液と指示薬のCu-PAN試液を加える。
Al3+はOH-と結合してヒドロキシ錯体Al(OH)3を生成する副反応を起こしやすく、
塩基性条件下ではさらに副反応が起こりやすくなるので、
本定量法は酸性条件下で行われる。
Al3+をCu-PAN指示薬を用いてキレート滴定する場合は、pH3の酸性条件下で行う。

 

エチレンジアミン四酢酸(EDTA)は、
塩基性条件下で非共有電子対を供与しやすくなり、
配位結合しやすくなるので、
EDTAを用いるキレート滴定は塩基性条件下で行うものが多い。

 

しかし、分析対象の金属イオンがOH−と反応してヒドロキシ錯体を生成する副反応を起こしやすい場合、
副反応を抑えるためにキレート滴定を酸性条件下で行うことがある。

 

 

◆ [ b ]について
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)EDTAと金属イオンは1:1でキレートを形成するので、
EDTAとAl3+は1:1のモル比で対応することになる。
0.05mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素ナトリウム液1mLに含まれるEDTAは0.05mmolである。
0.05mmolのEDTAは0.05mmolのAlに対応する。

 

本問ではAlの分子量を26.98とするので、
0.05mmolのAlの質量は、
0.05mmol×26.98 (g/mol) ≒ 1.349mg
したがって、
0.05mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素ナトリウム標準液1mLに対する
Alの対応量は下記の通り。

 

0.05mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素ナトリウム液1mL = 1.349mg Al

 

 

★ 本問の原理についての補足
指示薬のCu-PANのPANはキレート試薬である。
Al3+とCu-PANを含む試料にエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を滴加すると、
Al3+は優先的にEDTAとキレートを形成する。
滴定終点では、未反応のAl3+が無くなり、過量となったEDTAがCu-PANと反応し、配位子交換でCu-EDTAとなり、遊離のPANが生成する。
その時、溶液の色は、結合型PANの赤色から遊離のPANの黄色に変わるので、終点を検出できる。

 

なお、Al3+とEDTAとのキレート生成の平衡定数は大きいが、
反応速度は遅いので、反応速度を上げるために煮沸する。

 

 

 

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