アミドトリゾ酸の純度試験と定量法 110回薬剤師国家試験問97-98

110回薬剤師国家試験 問97−98
次の記述は、X線造影剤として用いられる日本薬局方アミドトリゾ酸
(C11H9I3N2O4:613.91)の純度試験と定量法に関するものである。

 

110回薬剤師国家試験問97-98 アミドトリゾ酸の純度試験と定量法

 

純度試験 芳香族第一アミン
本品0.20gをとり、水5mL及び水酸化ナトリウム試液1mLを加えて溶かし、
亜硝酸ナトリウム溶液(1→100)4mL 及び1mol/L 塩酸試液10mLを加えて振り混ぜ、
2分間放置する。
次にアミド硫酸アンモニウム試液5mLを加えてよく振り混ぜ、1分間放置した後、
1-ナフトールのエタノール(95)溶液(1→10)0.4mL、
水酸化ナトリウム試液15mL及び水を加えて正確に50mLとする。
この液につき、同様に捜査して得た空試験液を対照とし、
紫外可視吸光度測定法により試験を行うとき、
波長485nmにおける吸光度は0.15以下である。

 

定量法
本品約0.5gを精密に量り、けん化フラスコに入れ、
水酸化ナトリウム試液40mLに溶かし、亜鉛粉末1gを加え、
還流冷却器を付けて30分間煮沸し、冷後、ろ過する。
フラスコ及びろ紙を水50mLで洗い、洗液は先のろ液に合わせる。
この液に酢酸(100) 5mLを加え、 0.1mol/L硝酸銀液で滴定する。
(指示薬: テトラブロモフェノールフタレインエチルエステル試液1mL)。
ただし、滴定の終点は沈殿の黄色が( ウ )に変わるときとする。

 

0.1mol/L硝酸銀液1mL = ( エ )mg C11H9I3N2O4

 

問97
純度試験の操作を行って得られる芳香族第一アミンの許容限度に最も近いのはどれか。
1つ選びなさい。
ただし、芳香族第一アミンの本操作による呈色物の比吸光度E1%1cm(485nm)は475、
層長は1cmとする。
1 0.040%
2 0.079%
3 0.16%
4 0.79%
5 1.58%

 

問98 定量法に関する記述として正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 本定量法の原理は、Volhard法に基づいている。
2 下線部アの標準液は、0.1mol/Lチオシアン酸アンモニウム液の標定に用いられる。
3 下線部イの指示薬の代わりにフルオレセインナトリウムを用いることができる。
4 ウに入る色は、橙色色である。
5 エに入る数字は、20.46である。

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110回薬剤師国家試験 問97 解答解説

 

正解は選択肢2の0.079%である。

 

110回薬剤師国家試験問97-98 アミドトリゾ酸の純度試験と定量法

 

純度試験とは、医薬品に含まれる混在物の種類及びその量の限度を規定する試験である。
本問の芳香族第一アミンの純度試験では、
試験操作後の本品0.20gの溶液50mLについて、
波長485nmにおける吸光度が0.15以下と規定されている。
よって、芳香族第一アミンの許容限度(%)を求めるには、
試験操作後の溶液の吸光度が0.15となる時の芳香族第一アミンの濃度を求めればよい。

 

本問の試験では、
芳香族第一アミンの本操作による呈色物の比吸光度E1%1cm(485nm)は475、
層長は1cmとする。
これは、芳香族第一アミンの濃度が1w/v%の時、
波長485nmの吸光度が475であることを意味する。
これより、吸光度が0.15となるのときの濃度をX w/v%とすると、
Xは以下の通り求められる。
1:X = 475:0.15
X = 0.15/475

 

よって、本問の純度試験での芳香族第一アミンの許容限度は、
試験操作後の溶液の濃度で(0.15/475) w/v%と求められた。
この濃度を本品での質量百分率(%)に換算する。
本品の採取量が0.20g、
試験操作後の溶液の全量が50mLであることから、
求める質量百分率(%)は、以下のように計算される。
  (0.15/475) w/v%
= (0.15/475)g/100mL
= (0.075/475)g /50mL より
(0.075/475)g/0.20g ×100% ≒ 0.079 %

 

 

110回薬剤師国家試験 問98 解答解説

 

正解は、選択肢2と5である。

 

110回薬剤師国家試験問97-98 アミドトリゾ酸の純度試験と定量法

 

◆ 1,4について
1 × 本定量法の原理は、Volhard法に基づいている。
→ 〇 本定量法の原理は、Fajans法(ファヤンス法)に基づいている。

 

4 × ウに入る色は、橙色である。
→ 〇 ウに入る色は、緑色である。

 

本問の定量法は、吸着指示薬を用いる沈殿滴定法であり、
これをFajans法(ファヤンス法)と呼ぶ。

 

アルカリ性条件下、アミドトリゾ酸と亜鉛を反応させると、
還元反応が起こり、
アミドトリゾ酸のベンゼン環からヨウ化物イオン(I)が遊離する。
その溶液に硝酸銀液を加えると、
AgとIが反応し、
AgIの難溶性沈殿を生成する反応を滴定に利用する。
指示薬には、
吸着指示薬であるテトラブロモフェノールフタレインエチルエステルを用いる。
テトラブロモフェノールフタレインエチルエステルは、
酢酸酸性でのヨウ化物イオンの沈殿滴定に用いられる吸着指示薬である。

 

滴定終点前の未反応のIが存在する間は、
AgIの粒子にIが吸着しており、
そこに吸着指示薬のテトラブロモフェノールフタレインは吸着しない。
この時、沈殿は黄色を呈する。

 

未反応のIが無くなり、
Agが過剰になると、
AgIの粒子にAgが吸着し、
そこへ吸着指示薬のテトラブロモフェノールフタレインが吸着すると、
沈殿の色が黄色から緑色に変わる。
この時点を滴定終点とする。

 

 

◆ 3について
3 × 下線部イの指示薬の代わりにフルオレセインナトリウムを用いることができる。

 

フルオレセインナトリウムは、中性から塩基性条件下では、
酸性解離基からプロトンが解離して陰イオン型(Flu)となるので、
吸着指示薬として機能する。
本問の定量法は、酢酸酸性下で行われるので、
フルオレセインナトリウムは分子型となり、吸着指示薬として機能しない。

 

 

◆ 2について
2 〇 下線部アの標準液(0.1mol/L硝酸銀液)は、
0.1mol/Lチオシアン酸アンモニウム液の標定に用いられる。

 

0.1mol/Lチオシアン酸アンモニウム液の標定は、
0.1mol/L硝酸銀液を用いた直接滴定で行われる。
この滴定は、銀イオン(Ag)とチオシアン酸イオン(SCN)が反応し、
AgSCNの難溶性塩を生成する反応を利用しており、
これを硝酸酸性下、指示薬として硫酸アンモニウム鉄(III))を用いて行う。
この沈殿滴定法をVolhard法(フォルハルト法)と呼ぶ。

 

 

◆ 5について
5 〇 エに入る数字は、20.46である。

 

0.1mol/L 硝酸銀液1mL = 20.46mg C11H9I3N2O4

 

110回薬剤師国家試験問97-98 アミドトリゾ酸の純度試験と定量法

 

構造式より、アミドトリゾ酸は3つのヨウ素を持つ。
このことから、定量法の操作により、
1molのアミドトリゾ酸から3molのIが遊離することになるので、
アミドトリゾ酸と硝酸銀はモル比1:3で対応する。

 

これに基づいて、
0.1mol/L硝酸銀液1mLのアミドトリゾ酸の対応量を求める。

 

0.1mol/L硝酸銀液1mLに含まれる硝酸銀は0.1mmolである。
0.1mmolの硝酸銀は1/3×0.1mmolのアミドトリゾ酸に対応する。
本問ではアミドトリゾ酸の分子量を613.91とするので、
1/3×0.1mmolのアミドトリゾ酸の質量は、
1/3×0.1mmol×613.91 (g/mol)= 20.46mg
したがって、
0.1mol/L硝酸銀標準液1mLのアミドトリゾ酸の対応量は下記の通り。

 

0.1mol/L硝酸銀液1mL = 20.46mg アミドトリゾ酸

 

 

★ 別解:式による対応量の計算

 

本問の硝酸銀液の対応量は、下記の計算式を用いても計算できる。

 

110回薬剤師国家試験問97-98 アミドトリゾ酸の純度試験と定量法

 

本問では、アミドトリゾ酸と硝酸銀の反応について、
アミドトリゾ酸(目的成分)の化学当量は1、
硝酸銀(標準液の成分)の化学当量は3である。
硝酸銀標準液の濃度は0.1mol/L、
アミドトリゾ酸の分子量は613.91であるので、
求める対応量は、式を用いて以下のように計算できる。

 

110回薬剤師国家試験問97-98 アミドトリゾ酸の純度試験と定量法

 

関連問題
・ファヤンス法による生理食塩液の定量 89回問30

 

・フォルハルト法 92回問32

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