NMRの基準物質として用いられるTMSはテトラメチルシランである。 100回薬剤師国家試験問108の1
第100回薬剤師国家試験 問108の1
NMRについて、下記の記述の正誤を判定してみよう。
1 基準物質として用いられるTMSは、トリメチルシランである。
第100回薬剤師国家試験 問108の1 解説
1 × 基準物質として用いられるTMS は、トリメチルシランである。
→ 〇 基準物質として用いられるTMS は、テトラメチルシランである。
通例、H-NMRで溶媒として有機溶媒を用いた場合は、
内部基準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を用いる。
NMR法では、基準物質の原子核の化学シフトを0ppmとし、
他の原子核の化学シフトを基準物質との相対で示す。
テトラメチルシラン(TMS)の構造は下記の通り。
ケイ素(Si)の電気陰性度は1.9で炭素の2.5よりも小さいため、
テトラメチルシランのメチル基の電子密度は非常に高くなっている。
電子密度が高くなると、電子の運動による外部磁場に対する遮へい効果が大きくなる。
テトラメチルシランのメチルプロトンは電子密度が非常に高く、
磁気的遮へいが非常に大きいため、
低い共鳴周波数でNMR現象を示すので、
NMRスペクトルにおいてシグナルが著しく高磁場領域(低周波数領域)に現れる。
このため、テトラメチルシランはNMR法で溶媒が有機溶媒の時の基準物質として用いられる。
なお、テトラメチルシラン(TMS)は水に溶けないため、
H-NMRで溶媒に水や重水(D2O)を用いる場合の基準物質としては、
3-トリメチルシリルプロパンスルホン酸ナトリウム(DSS)や3-トリメチルシリルプロピオン酸ナトリウム(TSP)などが用いられる。