ベンゼンの水素は、π電子による反遮蔽効果を受ける 102回問99の3
第102回薬剤師国家試験 問99の3
核磁気共鳴スペクトル測定法に関する記述のうち正誤を判定してみよう。
3 ベンゼンの水素は、π電子による遮へい効果を受ける。
第102回薬剤師国家試験 問99の3 解答解説
3 × ベンゼンの水素は、π電子による遮へい効果を受ける。
→ 〇 ベンゼンの水素は、π電子による反遮へい効果を受ける。
化合物中の1Hは、電子の円運動により発生する誘起磁場の影響を受ける。
誘起磁場は外部磁場と逆向きの磁場であり、
外部磁場を弱める遮へい効果を与える。
遮へい効果の程度は遮へい定数(σ)で表され、
原子核が置かれる環境によってその値が異なり、
遮へい効果が大きいほど遮へい定数(σ)は大きくなる。
NMRにおいて、
不飽和結合では外部磁場の影響でπ電子の環電流が生じ、
磁気異方性効果が与えられる。
磁気異方性効果により、
遮へいが強められる場合(高磁場シフト)と
弱められる場合(反遮蔽,低磁場シフト)がある。
ここで、遮へいが弱められることを反遮へい効果と呼ぶ。
芳香環炭素に結合する水素は磁気異方性効果で遮へいが弱められる場合に該当し(反遮蔽)、
芳香環プロトンの磁気的遮蔽は小さい。
このため、芳香環プロトンのシグナルは化学シフト値で7〜8ppm前後の比較的に低磁場に現れる。
アルケン(二重結合)の水素も磁気異方性効果により遮へいが弱められる場合に該当し(反遮蔽,低磁場シフト)、
4.5〜7.5ppm前後に現れる。
一方、アルキン(三重結合)の水素は磁気異方性効果により遮へいが強められる場合に該当し(高磁場シフト)、
不飽和結合の炭素に結合する水素としては比較的に高磁場の1.5〜3ppm前後に現れる。