ベンゼン環プロトン同士のカップリングのスピン-スピン結合定数
本ページでは、H-NMRのベンゼン環プロトン同士のカップリングのスピン-スピン結合定数について説明しています。
★ ベンゼン環のプロトン同士のカップリングにおけるスピン-スピン結合定数(J値)
スピン-スピン結合(カップリング)によるシグナルの分裂幅をスピン-スピン結合定数(J値)と呼ぶ。
ベンゼン環ではプロトン同士が互いにカップリングしており、カップリングの仕方とそれに対するスピン-スピン結合定数(J値)は下記の通り。
(1)オルトカップリング
互いにオルト位のプロトン同士のカップリングをオルトカップリングと呼び、
そのスピン-スピン結合定数(J値)は6〜9Hzである。
(2)メタカップリング
互いにメタ位のプロトン同士のカップリングをメタカップリングと呼び、
そのスピン-スピン結合定数(J値)は1〜3Hzである。
(3)パラカップリング
互いにパラ位のプロトン同士のカップリングをパラカップリングと呼び、
そのスピン-スピン結合定数(J値)は0〜1Hzである。
パラカップリングのJ値は非常に小さいので、スペクトルで確認できないことが多い。
下記のメラトニンのインドール環のプロトンを例にする。
◆ オルトカップリングでは大きく分裂
下記のインドール7位のプロトンは6位のプロトンとのオルトカップリングで大きく分裂する。
厳密には4位のプロトンとパラカップリングもするがスペクトルで確認できない。
その結果、7位プロトンのシグナルは下記のクのような6〜9Hzに分裂した二重線になる。
このようにオルトカップリングの分裂は大きい(J値6〜9Hz)。
◆ メタカップリングでは大きく分裂
下記の4位のプロトンは6位のプロトンとメタカップリングする。
厳密には7位のプロトンとパラカップリングもするがスペクトルで確認できない。
その結果、4位プロトンのシグナルは下記のキのような1〜3Hzに分裂した二重線になる。
このようにメタカップリングの分裂は小さい(J値1〜3Hz)。
◆ オルトカップリングとメタカップリングの複合
下記の6位のプロトンは7位のプロトンとのオルトカップリングで大きく分裂し、
さらに、4位のプロトンとのメタカップリングで小さく分裂する。
その結果、6位プロトンのシグナルは下記のオのような二重の二重線(ダブルダブレットdd)となる。