メラトニンのH-NMR,不飽和度,整数質量 101回薬剤師国家試験問108

第101回薬剤師国家試験 問108
図1は、メラトニンの1H-NMR スペクトル(400MHz、DMSO-d6、基準物質はTMS)である。なお、ア及びエのシグナルは一重線であり、ケ及びコのシグナルはそれぞれNH基のプロトンに由来する。また、拡大図A及びBの拡大率はそれぞれ異なる。次の1〜5の記述の正誤を判定してみよう。

 

メラトニンのH-NMR,不飽和度,整数質量 101回薬剤師国家試験問108

 

1 アのシグナルは、aのプロトンに由来する。
2 イのシグナルの積分値は、オのシグナルの積分値と等しい。
3 インドール環6位のプロトンのシグナルは、オである。
4 メラトニンの不飽和度は7である。
5 メラトニンの整数質量は奇数である。

 

 

 

トップページへ

 

薬剤師国家試験過去問題集 科目別まとめ一覧 へ

 

薬剤師国家試験過去問題集 NMR 一覧 へ

 

第101回薬剤師国家試験 問108 解答解説

 

メラトニンの各プロトンのシグナルの対応は下記の通り。

 

メラトニンのH-NMR,不飽和度,整数質量 101回薬剤師国家試験問108

 

 

◆ 1について
1 × アのシグナルは、aのプロトンに由来する。

 

−O−CHのHは酸素のsp3炭素に対する電子求引性誘起効果により、
電子密度が低くなり、遮蔽効果が小さくなるので、化学シフトは4〜5ppm前後になる。
aのプロトンは−O−CH3(メトキシ基)のプロトンなので、
エの3.7ppmの3Hの一重線が該当すると考えられる。

 

アのシグナルは−C(=O)−CH3のプロトンに由来する。

 

メラトニンのH-NMR,不飽和度,整数質量 101回薬剤師国家試験問108

 

 

◆ 2について
2 × イのシグナルの積分値は、オのシグナルの積分値と等しい。

 

7ppm前後のオ,カ,キ,クの1Hのシグナルはインドール環のプロトンのシグナルだと考えられる。
よって、イとウのシグナルは残った2つの−CH2−に由来するので積分値は2H分と考えられる。

 

メラトニンのH-NMR,不飽和度,整数質量 101回薬剤師国家試験問108

 

 

◆ 3について
3 ○ インドール環6位のプロトンのシグナルは、オである。

 

芳香環プロトン同士のカップリングについては下記のリンク先を参照
芳香環プロトン同士のカップリング

 

インドール環6位のプロトンは、
7位のプロトンとのオルトカップリングで大きく分裂し、
4位のプロトンとのメタカップリングで小さく分裂するので、
シグナルは二重の二重線(ダブルダブレットdd)となる。

 

4位のプロトンは6位のプロトンとのメタカップリングで小さく二重線に分裂する。

 

7位のプロトンは7位のプロトンとのオルトカップリングで大きく二重線に分裂する。

 

2位のプロトンは1位のプロトンとオルトカップリングするが、
NHのプロトンとのカップリングのためか、
オルトカップリングにしては分裂幅が小さくなっている。

 

メラトニンのH-NMR,不飽和度,整数質量 101回薬剤師国家試験問108

 

 

◆ 4について
4 ○ メラトニンの不飽和度は7である。

 

不飽和度については下記のリンク先を参照
不飽和度とは? 計算方法も解説

 

不飽和度(不足水素指数)とは、
構造中に含まれる環と不飽和結合の合計数を示す数値である。

 

メラトニンの構造より、
環は2つで、
不飽和結合はC=Cが4つとC=Oが1つで計5つより、
環と不飽和結合の総計は7なので、
不飽和度は7である。

 

メラトニンのH-NMR,不飽和度,整数質量 101回薬剤師国家試験問108

 

 

◆ 5について
5 × メラトニンの整数質量は奇数である。
→ 〇 メラトニンの整数質量は偶数である。

 

メラトニン(C13H16O2N2)は2つの窒素を含むので、
窒素ルールによると整数質量は偶数になる。

 

整数質量とは、各構成元素の質量数を存在比が最大の同位体のものとし、
かつ、それを整数に近似した値を用いて計算した物質の質量のことである。

 

一方、精密質量は小数点以下の値まで考慮して計算される物質の質量である。

 

分子の整数質量について“窒素ルール”というものがある。
この法則によると、
含まれる窒素原子の数が0か偶数個の分子の整数質量は偶数となり、
含まれる窒素原子の数が奇数個の分子の整数質量は奇数となる。
窒素ルールは窒素の最大存在比の同位体である14Nの結合手が3本と奇数であることに基づく。この法則より分子の整数質量が偶数か奇数かを見ることで、含有窒素数の見当が付けられる。

 

メラトニン(C13H16O2N2)は2つの窒素を含むので、
窒素ルールによると整数質量は偶数になるが、
実際の整数質量は232で偶数であり、整合性がある。

 

 

★他サイトさんの解説へのリンク
第101回問108(e-RECさん)

トップへ戻る