91回薬剤師国家試験問30 NMR ベンゼン環での電子供与基と求引基の置換と化学シフト
91回薬剤師国家試験 問30
下の図は1〜5に示したいずれかの化合物の1H NMRスペクトル(270 MHz、CDCl3)である。
このスペクトルに該当する化合物はどれか。ただし、測定溶媒に基づくシグナルは除いてある。
91回薬剤師国家試験 問30 解答解説
正解は5である。
以下、詳細
4ppm付近の2Hのシグナルより、
−O−CH2−の構造があると考えられる。
−O−CHのHの化学シフト値は4〜5ppm前後と覚えておこう。
これで、1,2,5に絞られる。
選択肢1の化合物には−O−CH3(メトキシ基)があるが、
もし構造中に−O−CH3があるならば、
4〜5ppmに3Hの一重線が現れるはずである。
しかし、設問のスペクトルにはそのようなシグナルはないので、
選択肢1は外れる。
◆ 置換基の電子効果によるベンゼン環プロトンの化学シフトの変動
ここで、置換基の電子効果と芳香環プロトンの化学シフト値の関係が構造解析のポイントとなる。
置換基の電子効果による芳香環プロトンの化学シフトの変動については下記のリンク先を参照
置換基の電子効果による芳香環プロトンの化学シフトの変動
エの化学シフト値は7.26ppm未満であることから、
電子供与基が置換していると考えられる。
オの化学シフト値は7.26ppmを超えていることから、
電子求引基が置換していると考えられる。
よって、
ベンゼン環に電子供与基と電子求引基が1つずつ置換している5が正解となる。
各プロトンのシグナルの対応は下記の通り。