不飽和度とは? 計算方法 薬学有機化学
本ページでは、有機化学の不飽和度の概要と計算方法について説明しています。
不飽和度(不足水素指数)とは、
構造中に含まれる環と不飽和結合の数を示す数値である。
不飽和度がxであれば、
環と不飽和結合の合計がx個ということである。
なお、C三CやC三Nといった三重結合は不飽和結合2つに相当するので注意。
以下では、不飽和度の計算について述べる。
炭素数がnの直鎖飽和炭化水素の水素の数は(2n+2)個である。
環または不飽和結合が1つあるごとに水素が(2n+2)個から2つずつ少なくなる。
よって、不飽和度は次のように計算できる。
不飽和度=(不足水素数)÷2
不足水素数を求めるにあたり、
ヘテロ原子を含む場合は分子式の水素の数を補正する必要がある。
補正の仕方は下記の通り。
(1)ハロゲン1つあたり水素の数を1つ増やす
ハロゲンが1つ置換すると、C−HがC−Xとなるように、水素が1つ減るためである。
(2)窒素1つあたり水素の数を1つ減らす
窒素が1つ置換すると、C−HがC−NH2となるように、水素が1つ増えるためである。
(3)酸素,硫黄は無視してよい
酸素や硫黄が1つ置換しても、C−HがC−OHとなるように、
水素の数は変わらないためである。
◆ アリピプラゾール(C13H16O2N2)の不飽和度
アリピプラゾール(エビリファイ)の分子式は、
C23H27Cl2N3O2である。
この不飽和度を計算してみる。
まず不足水素数を求める前段階として、水素の数を補正する。
分子式の水素は27であるが、
窒素が3つなので水素の数を3つ減らし、
ハロゲンが2つなので水素の数を2つ増やすと、
補正された水素の数は27−3+2=26となる。
酸素は気にしなくてよい。
次に不足水素数を求める。
炭素数23の直鎖飽和炭化水素の水素の数は2×23+2=48であるので、
不足水素数は48−26=22である。
よって、アリピプラゾール(C13H16O2N2)の不飽和度は、
(不足水素数)÷2 =22÷2=11
と計算される。
アリピプラゾール(エビリファイ)の構造は下記の通りで、
環が4つで、不飽和結合が7なので、
計算された不飽和度11と一致する。
◆ クロルプロマジンの不飽和度
クロルプロマジンの分子式は、
C17H19ClN2Sである。
この不飽和度を計算してみる。
まず不足水素数を求める前段階として、水素の数を補正する。
分子式の水素は19であるが、
窒素が2つなので水素の数を2つ減らし、
ハロゲンが1つなので水素の数を1つ増やすと、
補正された水素の数は19−2+1=18となる。
硫黄は気にしなくてよい。
次に不足水素数を求める。
炭素数17の直鎖飽和炭化水素の水素の数は2×17+2=36であるので、
不足水素数は36−18=18である。
よって、クロルプロマジン(C17H19ClN2S)の不飽和度は、
(不足水素数)÷2 =18÷2=9
と計算される。
クロルプロマジンの構造は下記の通りで、
環が3つで、不飽和結合が6なので、
計算された不飽和度9と一致する。