テトラメチルシランと芳香環プロトンの磁気的遮へい 87回問24c
第87回薬剤師国家試験 問24c
核磁気共鳴法に関する記述の正誤を判定してみよう。
c テトラメチルシランのメチルプロトンは,ベンゼンの芳香環プロトンに比べて磁気的遮へいが少ない。
第87回薬剤師国家試験 問24c 解答解説
c × テトラメチルシランのメチルプロトンは,ベンゼンの芳香環プロトンに比べて磁気的遮へいが少ない。
→ 〇 テトラメチルシランのメチルプロトンは,ベンゼンの芳香環プロトンに比べて磁気的遮へいが大きい。
テトラメチルシラン(TMS)の構造は下記の通り。
ケイ素(Si)の電気陰性度は1.9で炭素の2.5よりも小さいため、
テトラメチルシランのメチル基の電子密度は非常に高くなっている。
電子密度が高くなると、電子の運動による外部磁場に対する遮へい効果が大きくなる。
テトラメチルシランのメチルプロトンは電子密度が非常に高く、
磁気的遮へいが非常に大きいため、
低い共鳴周波数でNMR現象を示すので、
NMRスペクトルにおいてシグナルが著しく高磁場領域(低周波数領域)に現れる。
このため、テトラメチルシランはNMR法で溶媒が有機溶媒の時の基準物質として用いられる。
芳香環炭素に結合する水素は、
磁気異方性効果で遮へいが弱められ(反遮へい効果を受け)、
NMR法で芳香環プロトンのシグナルは化学シフト値で7〜8ppm前後の比較的に低磁場領域(高周波数領域)に現れる。
詳細は下記のリンク先を参照
ベンゼン水素のπ電子による反遮蔽効果 102回問99の3