107回薬剤師国家試験問133 NMR 錠剤の成分として推定される医薬品Aの構造
107回薬剤師国家試験 問133
自宅の寝室で倒れている男性が救急搬送された。簡易検査の結果をもとに、直ちに対応する解毒薬が投与された。一方、寝室にはコップの中に大量の錠剤が沈んだ飲料水が残されていた。
問133(物理・化学・生物)
錠剤の成分が何かを調べるため、コップの中に残された薬剤に適切な処理をしたのち、1H NMR スペクトル(CDCl3 溶媒中)を測定した。得られたスペクトルをデータベースと照合したところ、図に示したチャートとシグナル及び積分値が一致した。錠剤の成分として推定される医薬品Aの構造はどれか。1つ選びなさい。
ただし、図はTMS を基準(0 ppm)とし、シグナルを積分曲線と共に示したもので、×は重溶媒中に微量に含まれるCHCl3 のシグナルである。
107回薬剤師国家試験 問133 解答解説
正解は1である。
以下、詳細
積分曲線より、
2.6ppm付近のシグナルは3Hの一重線だと考えられる。
2.5ppm前後の3Hの一重線で現れる構造として、
−C(=O)−CH3のメチル基や、
芳香環に置換するCH3が考えられる。
選択肢の化合物を見ると、
構造中にCH3を有するのは1,2,3であるので、
正解はこれらに絞られる。
次に、
7.2〜7.7ppmのシグナルに着目する。
これらは芳香環プロトンに由来し、
積分曲線より計7H分あると考えられる。
よって、設問の化合物は芳香環に計7個のHを有すると考えられる。
選択肢1,2,3の芳香環のHの数を数えてみる。
1,2,3の化合物のうち、計7個の芳香環のHを有するのは1だけである。
2と3は計8個の芳香環のHを有する。
以上より、
正解は1の化合物だと考えられる。
1の化合物はトリアゾラム(ハルシオン)である。
なお、4.1〜4.2ppmの1Hと5.5〜5.6ppmの1Hのシグナルは、
下記のイまたはウのHに由来する。
このように平面的な構造式では等価なHに思えるが、
実際は立体的な要因等により非等価なHであり、
それぞれ別のシグナルが現れることがある。