NMR ベンゼンの置換基の電子供与・求引と化学シフト

本ページでは、芳香環の置換基の電子供与性・求引性電子効果による化学シフトの変動ついて説明しています。

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★ 芳香環に対する置換基の電子効果によるプロトンの化学シフトの変動

 

(1)電子供与性電子効果による芳香環プロトンの高磁場シフト
置換基が芳香環に対して電子供与性電子効果を与えて芳香環の電子密度が高まると、
電子の動きにより芳香環プロトンが受ける遮へい効果が大きくなり、
芳香環プロトンの化学シフトは−にシフト(高磁場側,低周波数側にシフト)する。

 

芳香環の置換基との位置で影響度に差があり、
化学シフトの変動が大きい順に、
オルト位のH>パラ位のH>メタ位のH
となる傾向がある。

 

アミノ基(NR),ヒドロキシ基(OH),エーテル(OR)は芳香環に対する電子供与性共鳴効果が大きいので、化学シフトを比較的に大きく−へ(高磁場側、低周波数側へ)変動させる。
飽和炭化水素基も電子供与性なので−へ(高磁場,低周波数側へ)変動させる傾向がある。

 

無置換ベンゼンのプロトンの化学シフトは7.26ppmである。
よって、ベンゼン環プロトンの化学シフトが7.26ppmより−(高磁場側,低周波数側)であれば、
電子供与性基の置換が考えられる。
例として、OHまたはNH2置換による無置換ベンゼンのプロトンの化学シフト(7.26ppm)からの変動は下記の通り。

 

・ヒドロキシ基(−OH)の置換により、
(オルト位:−0.56,メタ位:−0.12,パラ位:−0.45)と、
高磁場側にシフトする。

 

・アミノ基(−NH2)の置換により、
(オルト位:−0.75,メタ位:−0.25,パラ位:−0.65)と、
高磁場側にシフトする。

 

NMR ベンゼンの置換基の電子供与・求引と化学シフト

 

 

(2)電子求引性電子効果による芳香環プロトンの低磁場シフト
置換基が芳香環に対して電子求引性電子効果を与えて芳香環の電子密度が低下すると、
電子の動きにより芳香環プロトンが受ける遮へい効果が小さくなり、
芳香環プロトンの化学シフトは+にシフト(低磁場側,高周波数側にシフト)する。

 

芳香環の置換基との位置で影響度に差があり、
化学シフトの変動が大きい順に、
オルト位のH>パラ位のH>メタ位のH
となる傾向がある。

 

=Oや=NといったO,N,Sのヘテロ不飽和結合を含む官能基は芳香環に対する電子求引性電子効果が大きいので、
比較的に大きく+へ(低磁場側,高周波数側へ)変動させる。

 

無置換ベンゼンのプロトンの化学シフトは7.26ppmである。
よって、ベンゼン環プロトンの化学シフトが7.26ppmより+(低磁場側,高周波数側)であれば、
電子求引性基の置換が考えられる。

 

例として、COOHまたはNO2置換による無置換ベンゼンのプロトンの化学シフト(7.26ppm)からの変動は下記の通り。

 

・カルボキシ基(−COOH)の置換により、
(オルト位:+0.85,メタ位:+0.18,パラ位:+0.25)と、
低磁場側にシフトする。

 

・ニトロ基(−NO2)の置換により、
(オルト位:+0.95,メタ位:+0.26,パラ位:+0.38)と、
低磁場側にシフトする。

 

NMR ベンゼンの置換基の電子供与・求引と化学シフト

 

 

(3)芳香環へのハロゲン置換による化学シフト値の変動
芳香環に対するハロゲンの電子効果について、
誘起効果は電子求引性で、共鳴効果は電子供与性だが、
誘起効果が相対的に大きく、ハロゲンの置換は芳香環に対して総合的には電子求引性となる。
ただ、ハロゲンの置換が芳香環プロトンの化学シフト値に与える影響は、以下に示す通り難しい。

 

・フッ素(F)の置換により、
(オルト位:−0.26,メタ位:0.00,パラ位:−0.20)

 

・塩素(Cl)の置換により、
(オルト位:+0.03,メタ位:−0.02,パラ位:−0.09)

 

・臭素(Br)の置換により、
(オルト位:+0.18,メタ位:−0.08,パラ位:−0.04)

 

・ヨウ素(I)の置換により、
(オルト位:+0.39,メタ位:−0.21,パラ位:−0.03)

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