90回薬剤師国家試験問30 C9H11NO2のNMR 1650cm-1のIR吸収
90回薬剤師国家試験 問30
下の図(ア及びイ)はa〜dに示したいずれかの化合物 (C9H11NO2)の1H-NMRスペクトル (300MHz)である。図アを示す化合物はIRスペクトル (neat)にて1700 cm-1付近に、又、図イを示す化合物はIRスペクトル (Nujol)にて1650 cm-1付近に共に強い吸収を示す。
スペクトルと化合物を正しく組合せなさい。
ただし、図アの3.4 ppm付近、図イの6.3 ppm付近及び7.9 ppm付近のシグナルは重水処理すると消失する。
また測定溶媒に基づくシグナルは除いてある。
a 2-ethoxybenzamide
b 4-ethoxybenzamide
c ethyl 3-aminobenzoate
d ethyl 4-aminobenzoate
90回薬剤師国家試験 問30 解答解説
図アはcのethyl 3-aminobenzoateであり、
図イはaの2-ethoxybenzamideだと考えられる。
以下、詳細
選択肢の化合物の構造は下記の通り。
設問のH-NMRスペクトルについて
アとイのスペクトルのいずれも7〜8ppm前後に4つの1Hのシグナルがあることから、
異なる2つの基が置換した1,2−二置換ベンゼンか1,3−二置換ベンゼンだと考えられる。
よって、aかcに絞られる。
次に、
本文に化合物のIRスペクトルの記述があるので、
これを手掛かりとする。
カルボン酸誘導体の赤外吸収スペクトルについては下記のリンク先を参照
カルボン酸誘導体の赤外吸収 83回問9
「図イを示す化合物はIRスペクトル (Nujol)にて1650 cm-1付近に共に強い吸収を示す」とあるので、
図イの化合物はアミドを有すると考えられる。
よって、図イはaの2-ethoxybenzamideだと考えられる。
そして、図アはcのethyl 3-aminobenzoateだと考えられる。
◆ 芳香環プロトンのカップリングによる推測
芳香環プロトンのカップリングの様子から構造を推測できる場合がある。
詳細は下記のリンク先を参照
芳香環プロトン同士によるカップリング
図アの4つの芳香環プロトンのシグナルのうち、
下記のEのシグナルはオルトカップリングをしていない。
オルトカップリングをしない芳香環プロトンを持つのは、
cのethyl 3-aminobenzoateである。
図イの4つの芳香環プロトンのシグナルは、
いずれもオルトカップリングをしている。