NMR 一般にシグナルの面積強度はプロトンの数に比例する 82回問40a
第82回薬剤師国家試験 問40a
核磁気共鳴法(1H-NMR)に関する次の記述の正誤を判定してみよう。
a 一般にシグナルの面積強度はプロトンの数に比例する。
82回薬剤師国家試験 問40a 解答解説
a ○ 一般にシグナルの面積強度はプロトンの数に比例する。
1H-NMRにおいて、
各シグナル間の面積比(積分比)は化学的に等価なプロトンの個数比となる。
下記の化合物中の水素は化学的に等価なものごとにア〜オに分けられ、
アは12個、イは2個、ウは1個、エは1個、オは2個である。
よって、1H-NMRスペクトルの各シグナル間の面積比(積分比)は、
ア:イ:ウ:エ:オ=
12:2:1:1:2
となる。
よって、
シグナルの面積比から化学的に等価なプロトンの個数の比を知ることができる。
★ 積分曲線の高さの比からプロトンの個数比がわかる場合もある
また、積分曲線が示されている場合は、
積分曲線の高さ(上昇分)の比からも化学的に等価なプロトンの個数比を知ることができる。
下記の化合物中の水素は化学的に等価なものごとにa〜dに分けられ、
aは3個、bは2個、cは2個、dは1個である。
よって、1H-NMRスペクトルの各シグナル間の積分曲線の高さの比は、
a:b:c:d=
3:2:2:1
となる。
★ 化学的に非等価なプロトンのピークの重なりに注意
下記の2−ニトロトルエンの水素は化学的に等価なものごとにA〜Eの5種類に分けられる。
このため、単純に考えると1H-NMRスペクトルでは、
A:B:C:D:E=
3:1:1:1:1
の面積比で5つのシグナルが現れると考えられる。
しかし、スペクトルを見ると、
3:2:1:1
の面積比で4つのシグナルが現れている。
これは、BとDのプロトンは非等価であるが、
これらのピークが重なり2H分のシグナルとなったためである。
このように、シグナル面積から等価な水素の数を推測するにあたり、
非等価なプロトンのシグナルの重なりで面積や積分曲線が大きくなることがあるので注意する。