平衡状態にある次の化学反応に関する記述 111回薬剤師国家試験問92の解説
111回薬剤師国家試験 問92
平衡状態にある次の化学反応に関する記述として、正しいのはどれか。
2つ選びなさい。
ただし、Δr H゜は標準反応エンタルピー、
(g)は気体状態、(s)は固体状態を表す。

1 この反応はエントロピー駆動の反応である。
2 縦軸に平衡定数の対数を、横軸に絶対温度をとると右上がりの直線となる。
3 圧力を上げると平衡は右に傾く。
4 温度を上げると平衡は右に傾く。
5 アンモニアを加えると平衡は右に傾く。
111回薬剤師国家試験 問92 解答解説
平衡状態にある次の化学反応に関する記述として正しいのは、
選択肢3、5 です。

以下で解説します。
選択肢1
1 この反応はエントロピー駆動の反応である。
これは誤りです。
正しくは、
「この反応はエンタルピー駆動の反応である」
です。
解説は下記のページをご覧ください。
この反応はエントロピー駆動かエンタルピー駆動か 111回問92の1解説
選択肢2
2 縦軸に平衡定数の対数を、横軸に絶対温度をとると右上がりの直線となる。
これは誤りです。
正しくは、
「縦軸に平衡定数の対数を、
横軸に絶対温度の逆数をとると右上がりの直線となる。」
です。
標準反応エンタルピーと標準反応エントロピーが温度によらず一定という条件下、
平衡定数Kと温度の関係式として、次式があります。

いくつかの温度で平衡定数(K)を測定し、
絶対温度の逆数(1/T)に対して
平衡定数の自然対数(lnK)をプロットすると、直線が得られます。
これをファントホッフプロットと呼びます。
本問の正反応は、
决 H゜< 0 であり、発熱反応です。
発熱反応の場合、
ファントホッフプロットは、傾きが正になり、
右上がりの直線となります。

選択肢3
3 圧力を上げると平衡は右に傾く。
これは正しいです。
圧力を上げると、系は圧力上昇を打ち消す方向に平衡を移動させます。
これはルシャトリエの原理です。
圧力上昇を打ち消すには、気体分子数が少ない側へ移動する必要があります。
気体分子数が減ると、容器内で運動する気体粒子が減るため、
圧力上昇の影響を和らげられるからです。
ポイントは「気体の物質量」です。
圧力変化による平衡移動では、主に 気体の mol 数 に注目します。
これを踏まえ本問の反応を見てみます。

この反応では、
NH3(g) + HCl(g)
が左辺にあります。
どちらも気体なので、左辺には 気体 2 mol があります。
一方、右辺は、
NH4Cl(s)
で、固体です。
固体は圧力変化の影響をほとんど受けないため、
気体としては 0 mol と考えます。
つまり、
左辺:気体 2 mol ⇄ 右辺:気体 0 mol
です。
なので、圧力を上げると、
平衡は気体の物質量が少ない右側へ移動します。
選択肢4
4 温度を上げると平衡は右に傾く。
これは誤りです。
正しくは、
「温度を上げると平衡は左に傾く」
です。
温度を上げることは、系に熱を加えたことになります。
すると、ルシャトリエの原理により、加えられた熱を消費する方向、
つまり 吸熱方向 に平衡が移動します。
この反応では、正反応が発熱反応、
逆反応が吸熱反応なので、
温度を上げると平衡は左に傾きます。
選択肢5
5 アンモニアを加えると平衡は右に傾く。
これは正しいです。
ルシャトリエの原理により、
反応物を加えると、その反応物を消費する方向へ進みます。
アンモニア NH3は正反応の反応物です。
NH3を加えると、
平衡はNH3を消費する方向に移動します。
したがって、平衡は右に傾きます。