92回薬剤師国家試験問177 日本薬局方一般試験法
92回薬剤師国家試験 問177
日本薬局方一般試験法に関する記述のうち、正しいものはどれか。
1 カールフィッシャー法は、試料中の水分を測定する方法であり、容量滴定法及び電量滴定法が規定されている。
2 比表面積測定法は、気体の物理吸着量からKozeny-Carmanの式に基づいて粉体試料の比表面積を測定する方法である。
3 熱分析法は、試料を強熱し、揮発せずに残留する物質の量を測定する方法である。
4 粉末X線回折測定法は、結晶性医薬品粉末の粒子径分布を測定するのに有用な方法である。
5 回転バスケット法は、内用固形製剤の試験液に対する崩壊性又は抵抗性を試験する方法の一つとして規定されている。
92回薬剤師国家試験 問177 解答解説
◆ 1について
1 〇 カールフィッシャー法は、試料中の水分を測定する方法であり、容量滴定法及び電量滴定法が規定されている。
水分測定法であるカールフィッシャー法は,メタノールなどの低級アルコール及びピリジンなどの有機塩基の存在で,水がヨウ素及び二酸化硫黄と定量的に反応(カールフィッシャー反応)することを利用して水分を測定する。
カールフィッシャー法による水分測定法には,ヨウ素の供給方法の異なる二つの方法(容量滴定法と電量滴定法)がある。
関連問題
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◆ 2について
2 × 比表面積測定法は、気体の物理吸着量からKozeny-Carmanの式に基づいて粉体試料の比表面積を測定する方法である。
→ 〇 比表面積測定法は、気体の物理吸着量からBET式に基づいて粉体試料の比表面積を測定する方法である。
主な粉体の比表面積測定法として、
吸着法(Langmuir式やBET式を用いる)と
透過法(Kozeny-Carman式を用いる)がある。
日本薬局方一般試験法には比表面積測定法として、
BET式を用いる気体吸着法が記されており、
動的流動法と容量法の2つの方法が示されている。
◆ 3について
3 × 熱分析法は、試料を強熱し、揮発せずに残留する物質の量を測定する方法である。
日本薬局方一般試験法において、熱分析法に関して下記のように記されている。
「熱分析は温度の関数として物質の物理的性質の変化を測定する一連の方法である.最も良く使われる方法は,試料物質のエネルギー変化を測定する,又は質量変化を測定するものである.これらの方法は,相変化の測定,化学組成変化の測定,純度の測定等種々の応用性を有する.
熱重量測定法 (TG )は制御された温度プログラムに従って,温度の関数として試料物質の質量を測定する方法である.
示差走査熱量測定法(DSC)は,物質又は物質の混合物の,昇温又は降温中に発生するエネルギー現象の測定,更に,エンタルピーや比熱の変化及びそれらが起こる温度の測定を行うのに用いられる方法である.」
なお、3の記述中の「試料を強熱し、揮発せずに残留する物質の量を測定する方法」は、強熱残分試験法である。
強熱残分試験法は,通例,有機物中に不純物として含まれる無機物の含量を知るために用いる。
◆ 4について
4 × 粉末X線回折測定法は、結晶性医薬品粉末の粒子径分布を測定するのに有用な方法である。
粉末X線回折測定法は、粉体の粒子径分布の測定には適さない。
粉末X線回折測定法は、結晶、結晶多形及び溶媒和結晶の同定、判定、定量、結晶化度の評価などに用いることができる。
関連問題
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◆ 5について
5 × 回転バスケット法は、内用固形製剤の試験液に対する崩壊性又は抵抗性を試験する方法の一つとして規定されている。
「内用固形製剤の試験液に対する崩壊性又は抵抗性を試験する方法」とは崩壊試験法のことである。
回転バスケット法は、崩壊試験法ではなく、溶出試験法の1つである。
溶出試験法は,経口製剤について有効成分の溶出を調べ、溶出試験規格に適合しているかどうかを判定するために行うものであるが,併せて著しい生物学的非同等を防ぐことを目的としている。
溶出試験法には、回転バスケット法,パドル法,フロースルーセル法がある。