アルキン 還元(水素付加) バーチ還元・リンドラー触媒 101回薬剤師国家試験問101の5
第101回薬剤師国家試験 問101の5
次の反応について、主生成物の構造式を正しく示しているか判定してみよう。
第101回薬剤師国家試験 問101の5 解答解説
5の反応では主生成物の構造がcisアルケンになっているがこれは誤りである。
5の反応はアルキンの水素化反応の1種でバーチ還元と呼ばれる。
バーチ還元の主生成物はtransアルケンであるため、
5の主生成物の正しい構造は下記の通り。
★ アルキンの水素化反応
アルケンまたはアルキンの水素化反応は、方法ごとに、Hがsyn付加してcis体が生成するのか、またはHがanti付加してtrans体が生成するのかを区別して押さえておこう。
アルキンの水素化反応として、下記の(1)〜(3)が重要である。
(1)パラジウム-カーボン(Pd-C)または白金触媒(Pt)などの金属触媒を用いた接触還元によるアルキンの水素化反応では、還元反応をアルケンで止めることが出来ず、アルカンまで還元される。
(2)リンドラー触媒による接触還元によるアルキンの水素化反応では、2つのHがsyn付加したcisアルケンが生成する。リンドラー触媒とは、パラジウム触媒の1種であるが、炭酸カルシムまたは硫酸バリウムを担体として酢酸鉛やキノリンを加えたもので、パラジウムの触媒活性を弱めたものになっている。そのため、アルキンからcisアルケンを得るところまでで還元反応を止めることができる。
(3)液体NH3の中で金属ナトリウムまたはリチウムと反応させるアルキンの水素化反応では、2つのHがanti付加したtransアルケンが生成する。これをバーチ還元と呼ぶ。
下記の図は、5のアルキンを(1)〜(3)の方法で水素化した場合を示すものである。