アルケンからアルコール合成 ヒドロホウ素化−酸化と酸触媒水和の違い 105回薬剤師国家試験問102

第105回薬剤師国家試験 問102
図は、アルケンAからアルコールC又はアルコールDを合成する経路を示している。この経路に含まれる反応又は化合物に関する記述の正誤を判定してみよう。

 

アルケン アルコール合成 ヒドロホウ素化−酸化と酸触媒水和の違い 105回問102

 

1 アルケンAから中間体Bが生じる反応はanti 付加反応である。
2 中間体BからアルコールCが生じる反応は酸化反応である。
3 アルコールCはラセミ混合物である。
4 アルコールCはアルコールDのジアステレオマーである。
5 アルコールDはメソ化合物(メソ体)である。

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薬剤師国家試験過去問題集 化学 アルケン

 

第105回薬剤師国家試験 問102 解答解説

 

◆ A→B→Cの反応について
アルケン アルコール合成 ヒドロホウ素化−酸化と酸触媒水和の違い 105回問102

 

A→B→Cの反応は、アルケンのヒドロホウ素化−酸化である。

 

アルケンのヒドロホウ素化−酸化については下記のリンク先を参照
アルケンのヒドロホウ素化−酸化 100回問102

 

 

アルケンのヒドロホウ素化−酸化による水和反応では、
アルケンのC=Cに対してH2OがOHとHに分かれてsyn付加したアルコールが生成する。主生成物が逆マルコフニコフ型であるのも特徴である。

 

アルケン アルコール合成 ヒドロホウ素化−酸化と酸触媒水和の違い 105回問102

 

1-methylcyclohexeneからヒドロホウ素化によりB1およびB2、ついでアルカリ性過酸化水素処理による酸化および加水分解により、主生成物としてC1またはC2のtrans-2-methylcyclohexanolが生成する。
なお、立体化学について、C1は(1R,2R)、C2は(1S,2S)であり、C1とC2は互いにエナンチオマー(鏡像異性体)の関係にあり、本問の反応では、C1とC2が等量ずつ生成すると考えられる。よって、本問の反応の生成物はC1とC2のラセミ体だと考えられる。

 

 

◆ 1について
1 × アルケンAから中間体Bが生じる反応はanti 付加反応である。
→ 〇 アルケンAから中間体Bが生じる反応はsyn 付加反応である。

 

アルケンのヒドロホウ素化では、アルケンのC=Cに対してボラン(BH3)がBH2とHに分かれてsyn付加する。

 

 

◆ 2について
2 〇 中間体BからアルコールCが生じる反応は酸化反応である。

 

アルケンのヒドロホウ素化の後、アルカリ性過酸化水素処理を行うと、酸化と加水分解が起こり、BH2がOHに置き換わったアルコールが生成する。

 

酸化と還元については下記のリンク先を参照
酸化・還元とは

 

 

◆ 3について
3 〇 アルコールCはラセミ混合物である。

 

 

◆ A→Dの反応について
アルケン アルコール合成 ヒドロホウ素化−酸化と酸触媒水和の違い 105回問102

 

A→Dの反応はアルケンの酸触媒下での水和反応である。

 

アルケンの酸触媒下での水和については下記のリンク先を参照。
アルケンの酸性条件下での水の付加 89回問8d

 

 

アルケンの酸触媒下での水和では、
アルケンのC=Cに対してH2OがHとOHに分かれて付加したアルコールが生成する。
アルケンの酸触媒下での水和反応は、中間体としてより安定なカルボカチオンを経るので、主生成物がマルコフニコフ型となる。

 

アルケン アルコール合成 ヒドロホウ素化−酸化と酸触媒水和の違い 105回問102

 

カルボカチオンの安定性については下記のリンク先を参照
カルボカチオンの安定性

 

◆ 4について
4 × アルコールCはアルコールDのジアステレオマーである。

 

ジアステレオマーとは、エナンチオマー以外の立体異性体であることを指す。
ヒドロホウ素化−酸化で生成するアルコールCは逆マルコウニコフ型であり、酸触媒下での水和反応で生成するアルコールDはマルコウニコフ型なので、CとDは構造異性体のうちの位置異性体である。

 

アルケン アルコール合成 ヒドロホウ素化−酸化と酸触媒水和の違い 105回問102

 

 

◆ 5について
5 × アルコールDはメソ化合物(メソ体)である。

 

メソ化合物については下記のリンク先を参照
メソ化合物 100回問8

 

 メソ化合物とは、不斉中心を持つが、分子内に対称面が存在し旋光性が分子内で打ち消されるため、アキラルで光学不活性なものを指す。
アルコールDに不斉中心はないのでメソ化合物ではない。

 

アルケン アルコール合成 ヒドロホウ素化−酸化と酸触媒水和の違い 105回問102

 

★他サイトさんの解説へのリンク
第105回問102(e-RECさん)

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