メスナとアクロレインの反応 マイケル付加反応の反応機構 102回薬剤師国家試験問207

102回薬剤師国家試験 問207
メスナは、イホスファミドの代謝物であるアクロレインと反応し、化合物Aを生成する。化合物Aの構造式として正しいのはどれか。1つ選びなさい。

 

αβ不飽和カルボニル・チオール マイケル付加 メスナ・アクロレイン 102回問207

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薬剤師国家試験過去問題集 化学 アルケン

 

 

102回薬剤師国家試験 問207 解答解説

 

正解は1である。

 

αβ不飽和カルボニル・チオール マイケル付加 メスナ・アクロレイン 102回問207

 

★ 電子求引基が置換している不飽和結合では、β位炭素が電子不足となり、求核剤が付加する求核共役付加反応が起こる(マイケル付加反応)。

 

ノーマルなアルケンは、π結合の電子雲の存在により電子豊富なため、求電子試薬が付加する反応(求電子付加反応)が起こることが多い。
しかし、電子求引基が置換しているアルケンでは、電子求引性電子効果により、β位の炭素が電子不足になっており、この炭素に対して求核試薬が付加するという求核共役付加反応が起こる。これをマイケル付加反応と呼ぶ。

 

αβ不飽和カルボニル・チオール マイケル付加 メスナ・アクロレイン 102回問207

 

なお、マイケル付加反応は、電子求引基の置換したアルキンでも起こり得る。

 

本問のメスナとアクロレインの反応について

 

αβ不飽和カルボニル・チオール マイケル付加 メスナ・アクロレイン 102回問207

 

設問の出発物のうち、アクロレインはカルボニル(C=O)のα位とβ位の炭素がアルケンとなっている。この構造をα,β−不飽和カルボニルという。α,β−不飽和カルボニルでは、カルボニルの電子求引性電子効果により、β位炭素が電子不足となっている。
一方、メスナの構造中にはチオール(−SH)があり、その硫黄原子は供与可能な非共有電子対を有し、ルイス塩基として働く。

 

よって、アクロレインのα,β−不飽和カルボニルの電子不足のβ位炭素に対し、メスナのチオールの硫黄原子が求核攻撃し、付加する(マイケル付加反応)。

 

αβ不飽和カルボニル・チオール マイケル付加 メスナ・アクロレイン 102回問207

 

シクロホスファミドやイホスファミドが投与されると、代謝物の1つとしてアクロレインが生成する。アクロレインは出血性膀胱炎を起こす有害な物質である。シクロホスファミドおよびイホスファミドを投与する際、メスナを併用することにより、有害な代謝物のアクロレインにメスナをマイケル付加させ、無毒性で水溶性の高い1の化合物に変えることができる。しかし、この反応は可逆反応であり、1の化合物は時間経過とともにE1cBという脱離反応を起こし、有毒なアクロレインが再生してしまう。そのため、大量の補液により尿量を増やすことで、アクロレインが再生する前に1の化合物を尿とともに体外に排泄する必要がある。

 

 

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102回問207(e-RECさん)

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