マルコフニコフ則とは?解説 なぜ?理由も説明 82回薬剤師国家試験問4a
本ページでは、
有機化学のマルコフニコフ則(Markovnikov則)について、
下記を例題に解説しています。
82回薬剤師国家試験 問4a
有機反応に関する次の記述aの正誤を判定してみよう。
a propeneに対するHBrの付加反応では、
通常の反応条件で(Markovnikov則に従い)1-bromopropaneを与える。
82回薬剤師国家試験 問4a 解答解説
a × propeneに対するHBrの付加反応では、
通常の反応条件で(Markovnikov則に従い)1-bromopropaneを与える。
→ 〇 propeneに対するHBrの付加反応では、
通常の反応条件で(Markovnikov則に従い)2-bromopropaneを与える。
マルコフニコフ則(Markovnikov則)とは、
アルケンに対する求電子付加反応において、
アルケンの2つの炭素のうち、アルキル置換基の少ない方の炭素に水素が付加し、
アルキル置換基の多い方の炭素に水素以外のものが付加した化合物が主生成物となることを指す。
求電子付加反応がマルコフニコフ則に従うことになるのは、
中間体として、より安定なカルボカチオンを生成する過程を経るためである。
カルボカチオンは、C+に置換するアルキル基の数が多いほど安定性が高い。
カルボカチオンの安定性については下記のリンク先を参照
カルボカチオンの安定性
本問の反応は、アルケンに対するハロゲン化水素の求電子付加反応であり、
マルコフニコフ則(Markovnikov則)に従う。
propeneに対するHBrの付加反応は、
下記のように進行すると考えられる。
propeneに対するHBrの付加反応は、
マルコフニコフ則(Markovnikov則)に従う。
よって、
propeneのアルケンの2つの炭素のうち、
アルキル置換基の少ない方の炭素にHが付加し、
アルキル置換基の多い方の炭素にBrが付加した2-bromopropaneが主生成物となる。
★ “より安定なCδ+を経由する”反応もマルコフニコフ則に従う
求電子付加反応がマルコフニコフ則に従うのは、
中間体としてより安定なカルボカチオンを経由するからであった。
同様に、“より安定なCδ+を経由する”ことも、
マルコフニコフ則に従う要因になり得る。
アルケンのオキシ水銀化−還元反応がその例として挙げられる。
詳細は下記のリンク先を参照
アルケンのオキシ水銀化−還元の反応機構 90回問12a
★ 逆マルコフニコフ則
マルコフニコフ則とは反対に、
アルケンの求電子付加反応において、
アルケンの2つの炭素のうち、
アルキル置換基の多い方の炭素に水素が付加し、
アルキル置換基の少ない方の炭素に水素以外が付加したものが主生成物となることもある。
これは逆マルコフニコフ則と呼ばれる。
その例として、アルケンのヒドロホウ素化−酸化反応が挙げられる。
詳細は下記のリンク先を参照
アルケンのヒドロホウ素化−酸化の反応機構 100回問102