アルケンからジオールを生成する反応 106回薬剤師国家試験問103

106回薬剤師国家試験 問103
反応1,2に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。ただし、化合物CとFは、それぞれの反応における主生成物とする。

 

アルケン 反応1,2に関する記述 106回薬剤師国家試験問103

 

1 出発物質AとDは室温で平衡関係にある。
2 化合物Bはラセミ体である。
3 化合物Cと生成物Fは互いにジアステレオマーの関係にある。
4 化合物Cの立体を含むIUPAC名は(2R, 3R)-ブタン-2,3-ジオールである。
5 中間体Eは環状構造をもつ。

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薬剤師国家試験過去問題集 化学 アルケン

 

 

106回薬剤師国家試験 問103 解答解説

 

◆ 1について
1 × 出発物質AとDは室温で平衡関係にある。

 

アルケン 反応1,2に関する記述 106回薬剤師国家試験問103

 

AとDは二重結合のシス−トランス異性体である。
室温条件では二重結合は回転しないので、シス体とトランス体が互いに変化することはない。ただし、高温条件では二重結合でも回転する可能性はある。

 

なお、立体配座異性体のs-cisとs-transは、室温でも互いに変化することがある。
s-cisとs-transについては下記のリンク先を参照
s-シス配座・s-トランス配座の安定性の比較 86回問10d

 

 

◆ 2について
2 〇 化合物Bはラセミ体である。

 

アルケン 反応1,2に関する記述 106回薬剤師国家試験問103

 

反応1のAからBを生成する反応は、アルケンAとm-クロロ過安息香酸が反応し、
エポキシド(オキシラン)を生成する反応である。
m-クロロ過安息香酸などの過酸のC=Oから最も離れた酸素は電子不足であり、求電子的に反応する。
この電子不足な酸素にアルケンのπ電子が供与され、付加することでエポキシド(オキシラン)が生成する。
アルケンに過酸の酸素が付加する際、アルケンの平面に対して、
酸素が上に付加するのと下に付加するのは平等に起こり得る。
このことから、反応物のアルケンの構造によっては、生成物のエポキシドは鏡像異性体の等量混合物(ラセミ体)となることがある。
反応1のAからBを生成する反応は、以下のように進行し、生成物Bはラセミ体となる。

 

アルケン 反応1,2に関する記述 106回薬剤師国家試験問103

 

 

◆ 3,4,5について

 

★ 反応1について

 

アルケン 反応1,2に関する記述 106回薬剤師国家試験問103

 

反応1は、始めに、アルケン(A)と過酸が反応してエポキシド(B)を生成する。
続いて、エポキシド(B)を酸触媒下で加水分解することで、
2つのOHがanti付加(trans付加)したジオール(C)が生成する。

 

 

アルケン 反応1,2に関する記述 106回薬剤師国家試験問103

 

この反応において、なぜ2つのOHがanti付加するのか等、
反応機構の詳細は下記のリンク先を参照
アルケンと過酸反応後、酸触媒加水分解の反応機構 103回問102

 

 

★ 反応2について

 

アルケン 反応1,2に関する記述 106回薬剤師国家試験問103

 

反応2は、始めに、アルケンに四酸化オスミウム(OSO4)を反応させると、OsO4がsyn付加し、中間体として環状オスミウム酸エステルを生成する
続いて、NaHSO3(亜硫酸水素ナトリウム)水溶液で還元処理することにより、2つのOHがsyn付加(cis付加)したジオールが生成する。

 

アルケン 反応1,2に関する記述 106回薬剤師国家試験問103

 

 

以上より、選択肢3〜5の記述の正誤は以下の通り。

 

3 × 化合物Cと生成物Fは互いにジアステレオマーの関係にある。
→ 〇 化合物Cと生成物Fは同一化合物((2R, 3S)-ブタン-2,3-ジオール)である。

 

4 × 化合物Cの立体を含むIUPAC名は(2R, 3R)-ブタン-2,3-ジオールである。
→ 〇 化合物Cの立体を含むIUPAC名は(2R, 3S)-ブタン-2,3-ジオールである。

 

5 〇 中間体Eは環状構造をもつ。

 

アルケンに四酸化オスミウム(OsO4)を反応させると、
OsO4がsyn付加し、環状オスミウム酸エステルが生成する。

 

アルケン 反応1,2に関する記述 106回薬剤師国家試験問103

 

 

★他サイトさんの解説へのリンク
106回問103(e-RECさん)

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