アルケン・アルキンの反応 総合問題 101回薬剤師国家試験問101
第101回薬剤師国家試験 問101
次の反応について、主生成物の構造式を正しく示しているか判定してみよう。
第101回薬剤師国家試験 問101 解答解説
★ アルケンの求電子付加反応
アルケンのC=Cはσ結合の上下にπ結合の電子雲が広がっているので、アルケンは電子豊富な構造である。
電子豊富なアルケンは求電子試薬と反応し、求電子付加反応を起こすことが多い。
◆ 1について
1の反応は、アルケンに対するハロゲン分子(X2)の付加反応である。
アルケンに対するハロゲン分子の付加については下記のリンク先を参照
アルケンのハロゲン分子付加 98回問103の2
アルケンに対するハロゲン分子(X2)の付加反応では、
アルケンのC=Cに対して2つのハロゲン(X)がanti付加(trans付加)したジハロゲン化物が生成する。
1の反応では、2つのBrがanti付加(trans付加)したものが主生成物になっているので正しい。
◆ 2について
2の反応はアルケンの酸触媒下での水和反応である。
アルケンの酸触媒下での水和については下記のリンク先を参照。
アルケンの酸性条件下での水の付加 89回問8d
アルケンの酸触媒下での水和では、
アルケンのC=Cに対してH2OがHとOHに分かれて付加したアルコールが生成する。
アルケンの酸触媒下での水和反応は、中間体としてより安定なカルボカチオンを経るので、主生成物がマルコフニコフ型となる。
カルボカチオンの安定性については下記のリンク先を参照
カルボカチオンの安定性
◆ 3について
3の反応は共役ジエンに対するハロゲン化水素(HX)の求電子付加反応である。
共役ジエンに対するハロゲン化水素の求電子付加については下記のリンク先を参照
共役ジエンのハロゲン化水素付加 第86回問10b
3の反応は下記のように進むと考えられる。
◆ 4について
4の反応はアルケンに過酸(R−C(=O)OOH))が反応し、C=Cに対してOがsyn付加したオキシラン(エポキシド)が生成する反応である。ここでのsyn付加とは、2つのC−O結合が立体的に同じ側にという意味である。
反応の前後で基質の置換基の立体は保持される。transならtransのまま、cisならcisのままである。
4の反応前のアルケンの立体はtransなので、反応後のオキシランでもtransである。
設問の図では、反応後のオキシランの立体がcisになっているので誤りである。
正しくは下記の図の通り。
Aのtransアルケンから、BまたはCのtransのオキシランが生成する。
本問のアルケンでは、過酸と反応し、O原子が上に付加するか下に付加するかで立体異性体が生じる。
なお、BとCの不斉炭素の立体について、Bは(S,S)、Cは(R,R)で、BとCは互いにエナンチオマー(鏡像異性体)の関係にあるものであり、これらは同じ確率で生成し得る。
よって、4の生成物は互いにエナンチオマーの関係にあるBとCの等量混合物であるラセミ体となると考えられる。
ちなみに、この反応においてアルケンに付加する過酸(R−C(=O)OOH))のO原子は、C(=O)から最も離れた↓のO原子である。国試過去問で問われたことがあるので押さえておこう。
◆ 5について
5の反応では主生成物の構造がcisアルケンになっているがこれは誤りである。
5の反応はアルキンの水素化反応の1種でバーチ還元と呼ばれる。
バーチ還元の主生成物はtransアルケンであるため、
5の主生成物の正しい構造は下記の通り。
詳細は下記のリンク先を参照
101回問101の5
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