エポキシドの開環の反応機構 酸性と塩基性での違い

本ページでは、エポキシド(オキシラン)の開環の反応機構について、
酸性と塩基性でそれぞれ説明しています。

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薬剤師国家試験過去問題集 化学 アルケン

 

下記のエポキシド(オキシラン)を例に、
開環反応の機構を、
酸性条件と塩基性条件とで分けて説明する。

 

エポキシドの開環の反応機構 酸性と塩基性での違い

 

★ オキシランの酸性条件下(酸触媒下)での開環反応では、
より安定なCδ+を経る機構で進み、
アルキル置換基の数が多い方の炭素が求核攻撃を受ける。

 

O原子のような電気陰性度の大きい原子と結合する炭素は正に分極してCδ+となっている。
オキシランではO原子が2つの炭素原子と結合している。酸触媒の働きでO原子がプロトン化されてO+となると、O+が共有電子対をより強く引き付けるようになり、O+に結合する炭素の正の分極度合い(δ+)がより一層強くなると考えられる。このことから、オキシランの酸性条件下での開環反応では、“より安定なCδ+を経る機構”で進むと考えられる。“より安定なCδ+経る機構”という呼称は、本ページのみで便宜的に用いるもので一般的な呼称ではない。
“より安定なCδ+を経る機構”とはどういうものか。
それは、カルボカチオンでアルキル置換基の数がより多い方の炭素がC+となる方がより安定であるのと同じ考え方で、炭素が正に分極することにおいても、アルキル置換基の数がより多い方の炭素がCδ+となる方がより安定であると考え、アルキル置換基の数がより多い方の炭素が求核攻撃を受けるというものである。
酸性条件下でのオキシランの開環は、アルキル置換基の数がより多い方の炭素が求核攻撃を受け、最終的に求核攻撃を受けた炭素と酸素の結合が切れ、攻撃を受けなかった炭素と酸素の結合は−OH基となる。

 

また、エポキシド(オキシラン)の開環反応の立体化学について、求核試薬(Nu)はO原子のいない側から炭素原子にアクセスするので、開環後の生成物はOHとNuがanti付加したものとなる。

 

エポキシドの開環の反応機構 酸性と塩基性での違い

 

 

★ オキシランの塩基性条件下での開環反応では、
SN2の機構で進み、
アルキル置換基の数が少ない方の炭素が求核攻撃を受ける。

 

塩基性条件下でのオキシランの開環反応は、SN2反応の機構で進行する。
塩基性条件下ではオキシランの三員環を構成する2つの炭素のうち、置換基がより少なく立体障害が小さく求核剤がアクセスしやすい方の炭素が求核攻撃を受け、求核試薬が付加すると同時に求核攻撃を受けた炭素−酸素の結合が切れて開環する。求核攻撃を受けなかった炭素と酸素の結合は、生成物において−OH基となる。

 

また、エポキシド(オキシラン)の開環反応の立体化学について、求核試薬(Nu)はO原子のいない側から炭素原子にアクセスするので、開環後の生成物はOHとNuがanti付加したものとなる。

 

エポキシドの開環の反応機構 酸性と塩基性での違い

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