以下の反応で得られる化合物の酸素原子アに関する記述 103回薬剤師国家試験問102
103回薬剤師国家試験 問102
以下の反応で得られる化合物の酸素原子アに関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選びなさい。
1 主に酸素原子a由来である。
2 主に酸素原子b由来である。
3 主に酸素原子c由来である。
4 主に酸素原子d由来である。
5 酸素原子a由来のものとd由来のものが約50%ずつ存在する。
103回薬剤師国家試験 問102 解答解説
正解は3である。
アルケンとメタクロロ過安息香酸等の過酸(R-COOOH)が反応すると、
エポキシド(オキシラン)が生成する。
さらに、エポキシドを酸性条件下で加水分解すると、
2つのOHがアンチanti付加したジオールが生成する。
その反応機構の中でも、本問では次の@とAの2つのことが解答のポイントである。
@ アルケンと過酸が反応してエポキシド(オキシラン)が生成する反応において、過酸のC=Oから最も離れた酸素がアルケンに付加する
過酸のC=Oから最も離れた酸素は電子不足であり、求電子的に反応する。
この電子不足な酸素にアルケンのπ電子が供与され、付加することでエポキシド(オキシラン)が生成する。
A エポキシド(オキシラン)の酸性条件下での開環反応では、エポキシドのアルキル置換基の数がより多い方の炭素がCδ+となり、このCδ+が求核攻撃を受ける。
エポキシドは、酸素が2つの炭素と結合し、三員環となっている。
酸性条件下、酸触媒と反応することにより、エポキシドの酸素がプロトン化されてO+となると、O+が共有電子対をより強く引き付けるようになり、O+に結合する炭素は大きく正に分極し、Cδ+となり、求核剤と反応しやすくなる。
この時、エポキシドのO+に結合する2つの炭素のうち、アルキル置換基の数がより多い方の炭素がCδ+となる方がより安定である。
以下の例では、BよりAの状態の方が安定なので、主にAの状態を経由して反応が進む。
エポキシドの酸性条件下での開環反応では、主にアルキル置換基の数がより多い方の炭素がCδ+となる状態を経由し、このCδ+に求核剤(Nu)が反応し、付加すると同時にエポキシドは開環する。。
この時、求核剤がCδ+にアクセスする経路として、エポキシドの酸素のいない側からの方がアクセスしやすい。
よって、求核剤(Nu)は、主に酸素のいない側からCδ+にアクセスする。このことから、エポキシドの開環後の主生成物は、OHとNuがanti付加(trans付加)したものとなる。
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