ナトリウム利尿ペプチドの分泌、作用、分解 111回薬剤師国家試験問112の5の解説
111回薬剤師国家試験 問112の5
以下の記述の正誤を判定してみよう。
5 ナトリウム利尿ペプチドは、尿細管及び集合管における Na+ の再吸収を促進する。
111回薬剤師国家試験 問112の5 解答解説
5 ナトリウム利尿ペプチドは、尿細管及び集合管における Na+ の再吸収を促進する。
これは誤りです。
正しくは、
「ナトリウム利尿ペプチドは、尿細管及び集合管における Na+ の再吸収を抑制する」
です。
ナトリウム利尿ペプチドとは
ナトリウム利尿ペプチドの代表的なものには、
・ANP:心房性ナトリウム利尿ペプチド
・BNP:脳性(B型)ナトリウム利尿ペプチド
があります。
心房や心室が循環血液量の増加によって伸展すると、
それが刺激となり心房や心室から分泌されます。
ANPは主に心房筋細胞から、
BNPは主に心室筋細胞から分泌されます。
ANP・BNPの作用
ANP・BNPは細胞膜のナトリウム利尿ペプチド受容体に結合し、
受容体内在性の膜型グアニル酸シクラーゼを活性化して、
細胞内cGMPを増加させます。
ANP・BNPは各組織の受容体に結合し、以下の作用を示します。
糸球体濾過を増やす
ANP・BNPは、腎血管や糸球体に作用し、
糸球体毛細血管内圧を上昇させる方向に働きます。
その結果、糸球体濾過量が増えます。
一般的には、
・輸入細動脈を拡張する
・輸出細動脈を収縮させる方向に働く
・メサンギウム細胞を弛緩させ、濾過面積を増やす
ことにより、糸球体濾過量(GFR)を増加させます。
腎臓でのNa+再吸収を抑える
ANP・BNPは、腎臓の尿細管及び集合管でNa+の再吸収を抑えます。
この結果、Na+が尿中へ排泄され、
それとともに水も尿中へ排泄されます。
レニン分泌を抑える
ANP・BNPは、腎臓の傍糸球体細胞からのレニン分泌を抑制します。
その結果、アンジオテンシンUによる血管収縮やNa+再吸収が低下し、
アルドステロンによるNa+再吸収も低下します。
アルドステロン分泌を抑える
ナトリウム利尿ペプチドは、RAASを介した間接作用に加えて、
副腎皮質球状帯に直接作用して、アルドステロン分泌を抑えます。
交感神経系・RAASへの拮抗作用
ナトリウム利尿ペプチドは、単なる利尿ホルモンではなく、
心不全時に活性化する神経体液性因子に拮抗します。
抑制する方向に働くものは、
・レニン分泌
・アンジオテンシンU作用
・アルドステロン分泌
・交感神経活性
・バソプレシンによる水保持
などです。
Na+・水保持系を抑える + 血管収縮系を抑える
ことで、循環血液量と血圧を低下させます。
心臓に対する保護作用
ANP・BNPは、血圧や体液量を下げるだけでなく、
心筋細胞や心臓線維芽細胞にも局所的に作用します。
主な作用は、
・心筋肥大の抑制
・心筋線維化の抑制
・心室リモデリングの抑制
・炎症や酸化ストレスの抑制方向の作用
です。
つまり、ナトリウム利尿ペプチドは、
心臓に負荷がかかったときに分泌され、
負荷を下げるとともに、
心臓そのものの構造変化を抑える代償性・心保護性ホルモンとして働きます。
ナトリウム利尿ペプチドの分解・消失
ナトリウム利尿ペプチドの作用は、主に次の経路で終了します。
ネプリライシンによる分解
ネプリライシンは、ナトリウム利尿ペプチドなどを分解する膜結合型酵素です。
ネプリライシンを阻害すると、ナトリウム利尿ペプチドの作用が増強されます。
この考えを利用した薬剤が、
ネプリライシン阻害作用を含むサクビトリルバルサルタン(エンレスト)です。
ナトリウム利尿ペプチド受容体Cによる取り込み
ナトリウム利尿ペプチド受容体C(NPR-C)は、
ナトリウム利尿ペプチドを結合して細胞内へ取り込み、除去します。
そのため、NPR-Cはクリアランス受容体とも呼ばれます。