粉体のかさ比容積・比表面積・吸湿 106回薬剤師国家試験問177

106回薬剤師国家試験 問177
表に示す特性を有する2種類の水溶性薬物の結晶性粉体A、Bがある。以下の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。ただし、粉体A、Bはいずれも結晶粒子内に空隙はなく、粒子密度と真密度は等しいものとする。また、粉体AとBの相互作用はないものとする。

 

粉体のかさ比容積・比表面積 106回薬剤師国家試験問177

 

1 疎充てん時において、粉体Aのかさ比容積は粉体Bの2倍以上である。
2 疎充てん時において、粉体Aのかさ密度は粉体Bの2倍以上である。
3 粉体AとBの粒子形状が同じである場合、粉体Aの比表面積は粉体Bの2倍以上である。
4 70%の相対湿度下では、粉体Bの方が著しく吸湿しやすい。
5 粉体Aと粉体Bを1:3の質量比で混合した粉体の臨界相対湿度は65%である。

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106回薬剤師国家試験 問177 解答解説

 

◆ 1について
1 × 疎充てん時において、粉体Aのかさ比容積は粉体Bの2倍以上である。

 

かさ比容積とは単位質量あたり(1gあたり)のかさ体積である。
よって、本問では、粉体AとBそれぞれについて、
質量を1gとしてかさ体積を求め、
その比を計算すればよい。

 

本問では、AとBについて真密度と充てん率の値が与えられている。
充てん率とは粉体のかさ体積に対する真体積の割合であり、
次式で計算される。

 

粉体のかさ比容積・比表面積 106回薬剤師国家試験問177

 

@式に充てん率と真体積を代入すれば、
かさ体積が求められる。
粉体AとBのそれぞれについて、
質量1gの真体積(V)は次のように求められる。

 

粉体のかさ比容積・比表面積 106回薬剤師国家試験問177

 

次に、
@の充てん率の式より、粉体AとBのそれぞれについて、
質量1gのかさ体積(V)を求める。

 

粉体のかさ比容積・比表面積 106回薬剤師国家試験問177

 

したがって、
疎充てん時において、粉体Aのかさ比容積は粉体Bの0.47倍である。

 

 

◆ 2について
2 〇 疎充てん時において、粉体Aのかさ密度は粉体Bの2倍以上である。

 

1の記述の解答過程で、
粉体AとBの質量1gのかさ体積は、
VかA=0.78cm3,VかB=1.67cm3と計算された。
よって、粉体AとBのかさ密度(ρ)は次のように求められる。

 

粉体のかさ比容積・比表面積 106回薬剤師国家試験問177

 

したがって、
疎充てん時において、粉体Aのかさ密度は粉体Bの2倍以上である。

 

 

◆ 3について
3 × 粉体AとBの粒子形状が同じである場合、粉体Aの比表面積は粉体Bの2倍以上である。

 

比表面積(m2/g)とは単位質量当たりの表面積である。

 

粉体の平均粒子径(d)と比表面積(Sw)・真密度(ρ)の関係について、
次の@式が成り立つ。

 

粉体のかさ比容積・比表面積 106回薬剤師国家試験問177

 

A式に粉体AとBのそれぞれについて、
平均粒子径と真密度の値を代入する。

 

粉体のかさ比容積・比表面積 106回薬剤師国家試験問177

 

粒子形状は同じであるため、粒子の形状係数(κ)はAとBで等しい。
よって、
粉体AとBの比表面積の比は次のように求められる。

 

粉体のかさ比容積・比表面積 106回薬剤師国家試験問177

 

したがって、
粉体AとBの粒子形状が同じである場合、
粉体Aの比表面積は粉体Bの0.37倍である。

 

 

◆ 4について
4 〇 70%の相対湿度下では、粉体Bの方が著しく吸湿しやすい。

 

水溶性の結晶性粉体の吸湿量について、
相対湿度が臨界相対湿度(CRH)を超えると急激に吸湿量が大きくなる。
言い換えると、水溶性の結晶性粉体では臨界相対湿度(CRH)未満において急激な吸湿は起こらない。

 

Aの臨界相対湿度(CRH)は80%であり、
Bの臨界相対湿度(CRH)は60%であるので、
70%の相対湿度下では、
粉体Bの方が著しく吸湿しやすいと考えらえる。

 

◆ 5について
5 × 粉体Aと粉体Bを1:3の質量比で混合した粉体の臨界相対湿度は65%である。
→ 〇 粉体Aと粉体Bを1:3の質量比で混合した粉体の臨界相対湿度は48%である。

 

水溶性の結晶性粉体同士を混合すると臨界相対湿度(CRH)は低下する。
水溶性の結晶性粉体の混合物のCRHは、個々の粉体のCRHの積に等しい。これをエルダーの仮説と呼ぶ。
水溶性の結晶性粉体AとBの混合物ABの臨界相対湿度(CRHAB)について、エルダーの仮説より次の@式が成り立つ。

 

CRHAB = CRHA×CRHB …@
CRHA:水溶性粉体Aの臨界相対湿度
CRHB:水溶性粉体Bの臨界相対湿度

 

粉体A及びBの臨界相対湿度(CRH)は、
それぞれ80%及び60%であり、
エルダーの仮説が成り立つので、
AとBの混合物の臨界相対湿度(CRHAB)は下記のように求められる。

 

CRHAB = CRHA×CRHB
= 0.8 × 0.6
≒ 0.48

 

したがって、粉体Aと粉体Bを混合した粉体の臨界相対湿度は48%である。

 

このように、水溶性粉体の混合物の臨界相対湿度(CRH)は、
個々の水溶性粉体の臨界相対湿度よりも低くなる。

 

水溶性粉体の混合物の臨界相対湿度について、
混合物中に共通イオンがあったり、複合体を形成するなど、
エルダーの仮説が成り立たない場合もある。
なお、水溶性の結晶性粉体同士を混合すると臨界相対湿度は低下するが、
水溶性の結晶性粉体と水不溶性の結晶性粉体を混合しても臨界相対湿度は低下しない。

 

 

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