粉体の吸湿度に関する記述 84回薬剤師国家試験問169
84回薬剤師国家試験 問169
薬物の吸湿度に関する次の記述の正誤について、正しいものはどれか。
a 相対湿度とは、実在する水蒸気圧の値を、その温度の飽和水蒸気圧の値で割った値を百分率で表したものである。
b 温度が異なっていても相対湿度の値が同じであれば、実在する水蒸気圧は同じである。
c 水に可溶な結晶性粉末は臨界相対湿度が定まっていて、それ以上の相対湿度では吸湿量が急激に大きくなる。
d 互いに反応を起こさない水に可溶な2種の結晶性粉末を混合すると、臨界相対湿度は低下する。
e 水に可溶な結晶性粉末と不溶な結晶性粉末とを混合しても、臨界相対湿度は低下しない。
84回薬剤師国家試験 問169
◆ a,bについて
a 〇 相対湿度とは、実在する水蒸気圧の値を、その温度の飽和水蒸気圧の値で割った値を百分率で表したものである。
b × 温度が異なっていても相対湿度の値が同じであれば、実在する水蒸気圧は同じである。
→ 〇 温度が異なると、相対湿度の値が同じでも、実在する水蒸気圧は異なるである。
相対湿度とは、実在する水蒸気圧の値を、その温度の飽和水蒸気圧の値で割った値を百分率で表したものである。
ある温度(t℃)での相対湿度は下記の式で表される。
相対湿度の値が同じでも、
温度が異なると、大気の飽和水蒸気圧は異なるので、
実在する水蒸気圧は異なる。
◆ cについて
c 〇 水に可溶な結晶性粉末は臨界相対湿度が定まっていて、それ以上の相対湿度では吸湿量が急激に大きくなる。
水不溶性物質の吸湿では、
Tのように、相対湿度の上昇とともに吸湿量が緩やかに上昇する。
水溶性物質の吸湿では、
Uのように、ある相対湿度以上になると急激に吸湿量が大きくなる。
その境となる相対湿度を臨界相対湿度(critical relative humidity:CRH)と呼ぶ。
なお、CRH では、粉体粒子表面を覆う薬物の飽和水溶液の水蒸気圧と、空気中の水蒸気圧が等しい。
◆ dについて
d 〇 互いに反応を起こさない水に可溶な2種の結晶性粉末を混合すると、臨界相対湿度は低下する。
エルダー(Elder)の仮説が成立する場合、
2種類以上の水溶性粉体の混合物の臨界相対湿度(CRH)は、
個々の粉体のCRHよりも小さくなり、吸湿しやすくなる。
詳細は下記のリンク先を参照
エルダーの仮説 混合物の臨界相対湿度CRH 90回問168
◆ eについて
e 〇 水に可溶な結晶性粉末と不溶な結晶性粉末とを混合しても、臨界相対湿度は低下しない。
水溶性の結晶性粉体同士を混合すると臨界相対湿度は低下するが、
水溶性の結晶性粉体と水不溶性の結晶性粉体を混合しても臨界相対湿度は低下しない。