アスピリンの加水分解 擬一次反応と特殊酸塩基反応 82回薬剤師国家試験問166

82回薬剤師国家試験 問166
次の図は、アスピリンの加水分解速度定数(k)に及ぼすpHの影響を示したものである。この図に関する次の記述の正誤について、正しいものはどれか。

 

アスピリンの加水分解 擬一次反応と特殊酸塩基反応 82回薬剤師国家試験問166

 

a この加水分解はアスピリンの懸濁液中での反応であり、擬ゼロ次反応に従う。
b アスピリンの加水分解は、酸塩基触媒がアスピリンの非イオン形、イオン形に作用するため複雑なpHプロファイルを示す。
c pH2以下ではイオン形のアスピリンが、主に水素イオン触媒により分解される。
d pH10以上で加水分解速度定数が増大するのは、アスピリンのイオン形の割合がpHと共に増大することによる。

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82回薬剤師国家試験 問166 解答解説

 

◆ aについて
a × この加水分解はアスピリンの懸濁液中での反応であり、擬ゼロ次反応に従う。
→ 〇 この加水分解はアスピリンの懸濁液中での反応であり、擬一次反応に従う。

 

下記のアスピリンの加水分解反応について、
アスピリン + H2O → サリチル酸 + 酢酸

 

アスピリンの加水分解の反応速度(ν)は、
本来、下記の2次反応速度式で表される。

 

ν = k・[アスピリン]・[H2O] …@

 

ここで、H2Oは大量にあり、
[H2O]は変化しないと考えられるため、
@式のk・[H2O]は一定とみなせる。

 

そこで、@式において、k・[H2O]= k擬1(擬一次反応速度定数)とすると、
アスピリンの加水分解の速度式は、下記のA式の擬一次反応として表される。

 

ν = k擬1・[アスピリン] …A

 

 

◆ b,c,dについて
b 〇 アスピリンの加水分解は、酸塩基触媒がアスピリンの非イオン形、イオン形に作用するため複雑なpHプロファイルを示す。

 

c × pH2以下ではイオン形のアスピリンが、主に水素イオン触媒により分解される。
→ 〇 pH2以下では分子形のアスピリンが、主に水素イオン触媒により分解される。

 

d × pH10以上で加水分解速度定数が増大するのは、アスピリンのイオン形の割合がpHと共に増大することによる。
→ 〇 pH10以上で加水分解速度定数が増大するのは、OH−が触媒として働くためである。

 

アスピリンのエステルの加水分解は、
水素イオンと水酸化物イオンの両方の触媒作用を受ける。
このような反応を特殊酸塩基触媒反応と呼ぶ。

 

一般に、特殊酸塩基触媒反応の分解速度定数kは次のB式で表される。
k = kH [ H+ ] +kOH [ OH ] …B

 

pHの低い酸性領域では、
水酸化物イオンの濃度は非常に小さく、
水素イオンのみが触媒作用を示す。
よって、Bについて、
OH・ [ OH ]は無視できるので、
k = kH ・[ H+ ]
と考えられる。

 

pHの高い塩基性領域では、
水素イオン濃度は非常に小さく、
水酸化物イオンのみが触媒作用を示す。
よって、Bについて、
H・ [ H+ ]は無視できるので、
k = kOH ・[ OH ]
と考えられる。

 

アスピリンの加水分解 擬一次反応と特殊酸塩基反応 82回薬剤師国家試験問166

 

なお、アスピリン(アセチルサリチル酸)は、
pHが低いほど分子形の割合が多くなり、
pHが高いほどイオン形の割合が多くなる。

 

アスピリンの加水分解 擬一次反応と特殊酸塩基反応 82回薬剤師国家試験問166

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