分解が1次反応に従う薬物の半減期の比と残存率比 84回薬剤師国家試験問166
84回薬剤師国家試験 問166
3つの異なる薬物X、Y、Zの水溶液中での分解反応は、いずれも1次反応式に従うものとする。25 ℃、同一の初期濃度(C0)条件を用いて、半減期を求めたところ、それぞれXで2時間、Yで4時間、Zで8時間であった。次の記述の正誤について、正しいものはどれか。
a 40 ℃、初期濃度がC0の条件のとき、得られる分解反応の半減期の比は、25 ℃の場合と同じである。
b 25 ℃、初期濃度がC0/2の条件のとき、得られる分解反応の半減期の比は、25 ℃、初期濃度をC0とした場合と同じである。
c 25 ℃、初期濃度がC0の条件のとき、8時間後のそれぞれの薬物の残存率比は[X]:[Y]:[Z]=1:4:8である。
84回薬剤師国家試験 問166 解答解説
X、Y、Zの水溶液中の分解反応はいずれも1次反応式に従う。
1次反応の特徴は下記のリンク先を参照
1次反応の速度式,半減期,グラフ
◆ aについて
a × 40℃、初期濃度がC0の条件のとき、得られる分解反応の半減期の比は、25 ℃の場合と同じである。
反応速度定数kは温度の関数であり、
温度変化に対するkの値の変化は各反応で異なる。
よって、薬物X、Y、Zの半減期の比は25℃と40℃では異なる可能性がある。
なお、反応速度定数kと温度の関係式としてアレニウス式がある。
下記のリンク先を参照
アレニウス式における反応速度定数と温度の関係 92回問22
◆ bについて
b 〇 25℃、初期濃度がC0/2の条件のとき、得られる分解反応の半減期の比は、25 ℃、初期濃度をC0とした場合と同じである。
分解が1次反応に従う場合の半減期(t1/2)は次式で表される。
上式より、一次反応の反応物の半減期は、
反応物の初期濃度とは無関係で一定である。
よって、
初期濃度がC0/2の条件のとき、得られる分解反応の半減期の比は、25 ℃、初期濃度をC0とした場合と同じであるといえる。
◆ cについて
c 〇 25 ℃、初期濃度がC0の条件のとき、8時間後のそれぞれの薬物の残存率比は[X]:[Y]:[Z]=1:4:8である。
各薬物の半減期は、
Xで2時間、Yで4時間、Zで8時間である。
初期残存率を100%とし、
8時間後の残存率を求めると下記のようになる。
Xの残存率:(1/2) 4 ×100%= 6.25%
Yの残存率:(1/2) 2 ×100%= 25%
Zの残存率:1/2×100%= 50%
したがって、
8時間後のそれぞれの薬物の残存率比は、
[X]:[Y]:[Z]= 6.25:25:50 = 1:4:8
である。