加水分解の反応速度とpH 84回薬剤師国家試験問20

84回薬剤師国家試験 問20
図は、電離する基を持たないある有機化合物の、温度一定の水溶液中における加水分解反応の速度定数k0とpHとの関係を示している。次の記述の正誤について、正しいものはどれか。

 

加水分解の反応速度とpH 84回薬剤師国家試験問20

 

a この加水分解反応はいずれのpHにおいても2次反応である。
b 緩衝液の種類によって、同一pHであってもk0が変化する可能性がある。
c k0が0.036 hr−1のとき、単位をs−1に検算すれば1.0×10−5 s−1となる。
d この図のデータから加水分解反応の活性化エネルギーを求めることができる。
e この化合物の半減期はpH 6付近において最も短い。

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84回薬剤師国家試験 問20 解答解説

 

◆ aについて

 

加水分解の反応速度とpH 84回薬剤師国家試験問20

 

a × この加水分解反応はいずれのpHにおいても2次反応である。
→ 〇 この加水分解反応はいずれのpHにおいても擬1次反応である。

 

グラフのk0の単位がhr−1であることから、
この反応は1次反応であると考えられる。

 

・加水分解の擬1次反応について

 

下記の化合物Aの加水分解反応について、
A + H2O → B + C

 

Aの加水分解の反応速度(ν)は、
本来、下記の2次反応速度式で表される。

 

ν = k・[A]・[H2O] …@

 

ここで、H2Oは大量にあり、
[H2O]は変化しないと考えられるため、
@式のk・[H2O]は一定とみなせる。

 

そこで、@式において、k・[H2O]= k擬1(擬一次反応速度定数)とすると、
Aの加水分解の速度式は、下記のA式の擬一次反応として表される。

 

ν = k擬1・[A] …A

 

 

◆ bについて
b 〇 緩衝液の種類によって、同一pHであってもk0が変化する可能性がある。

 

 

◆ cについて
c 〇 k0が0.036 hr−1のとき、単位をs−1に検算すれば1.0×10−5 s−1となる。

 

0.036 hr−1÷60÷60 = 1.0×10−5 s−1 となる。

 

 

◆ dについて
d × この図のデータから加水分解反応の活性化エネルギーを求めることができる。

 

図のデータから加水分解反応の活性化エネルギー(Ea)を求めることはできない。
なお、活性化エネルギー(Ea)はアレニウスプロットから求めることができる。
詳細は下記のリンク先を参照
アレニウスプロットの傾きとy切片 92回問22bc

 

 

◆ eについて

 

加水分解の反応速度とpH 84回薬剤師国家試験問20

 

e × この化合物の半減期はpH 6付近において最も短い。
→ 〇 この化合物の半減期はpH 6付近において最も長い。

 

図では、pH6付近で反応速度定数k0が最も小さくなっているので、
この化合物の半減期はpH 6付近において最も長く、最も安定であると考えられる。

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