初期含量に対する残存率が90%になるまでの時間 85回薬剤師国家試験問166
85回薬剤師国家試験 問166
薬物A〜Dについて、それぞれ3種類の異なる含量の水性注射剤(2 mL溶液、アンプル入り)を調製し、それらの40℃における経時的安定性を試験した。次の記述のうち、正しいものはどれか。
a 薬物Aについて、初期含量に対する残存率が90%となるまでの時間を求めたところ、初期含量に無関係であった。この結果から、薬物Aの分解は0次反応であることがわかった。
b 薬物Bについて、初期含量に対する残存率が90%となるまでの時間を求めたところ、初期含量に反比例していた。この結果から、薬物Bの分解は2次反応であることがわかった。
c 薬物Cについて、初期含量に対する残存率が50%となるまでの時間を求めたところ、初期含量に無関係であった。この結果から、薬物Cの分解は1次反応であることがわかった。
d 薬物Dについて、初期含量に対する残存率が50%となるまでの時間を求めたところ、初期含量の2乗に比例した。この結果から、薬物Dの分解は2次反応であることがわかった。
85回薬剤師国家試験 問166 解答解説
0次,1次,2次反応の特徴は下記のリンク先を参照
0次反応の速度式,半減期,グラフ
◆ a,bについて
a × 薬物Aについて、初期含量に対する残存率が90%となるまでの時間を求めたところ、初期含量に無関係であった。この結果から、薬物Aの分解は0次反応であることがわかった。
→ 〇 薬物Aについて、初期含量に対する残存率が90%となるまでの時間を求めたところ、初期含量に無関係であった。この結果から、薬物Aの分解は1次反応であることがわかった。
b 〇 薬物Bについて、初期含量に対する残存率が90%となるまでの時間を求めたところ、初期含量に反比例していた。この結果から、薬物Bの分解は2次反応であることがわかった。
0次反応,1次反応,2次反応のそれぞれについて、
初期含量に対する残存率が90%(0.9C0)となるまでの時間(t0.9)は次のように求められる。
★ 0次反応
分解が0次反応に従う場合、
濃度と時間の関係式として次式が成り立つ。
C = C0 − k0・t
C:時間tでの反応物の濃度 C0:初期の反応物の濃度
k0:0次反応速度定数
上式にC = 0.9C0 t = t0.9 を代入すると、
0.9C0 = C0 − k0・t0.9
よって、分解が0次反応に従う場合、
初期含量に対する残存率が90%となるまでの時間は、
初期含量に比例すると考えられる。
★ 1次反応
分解が1次反応に従う場合、
濃度の対数と時間の関係式として次式が成り立つ。
lnC = lnC0 − k1・t
C:時間tでの反応物の濃度 C0:反応物の初濃度
k1:一次反応速度定数 t:時間
上式にC = 0.9C0 t = t0.9 を代入すると、
ln 0.9C0 = lnC0 − k1・t0.9
よって、分解が1次反応に従う場合、
初期含量に対する残存率が90%となるまでの時間は、
初期含量に無関係であると考えられる。
★ 2次反応
分解が2次反応に従う場合、
濃度と時間の関係式として次式が成り立つ。
よって、分解が2次反応に従う場合、
初期含量に対する残存率が90%となるまでの時間は、
初期含量に反比例すると考えられる。
◆ c,dについて
c 〇 薬物Cについて、初期含量に対する残存率が50%となるまでの時間を求めたところ、初期含量に無関係であった。この結果から、薬物Cの分解は1次反応であることがわかった。
d × 薬物Dについて、初期含量に対する残存率が50%となるまでの時間を求めたところ、初期含量の2乗に比例した。この結果から、薬物Dの分解は2次反応であることがわかった。
薬物Dの分解は0次反応、1次反応、2次反応のいずれも該当しない。
0次反応,1次反応,2次反応のそれぞれについて、
初期含量に対する残存率が50%となるまでの時間(半減期:t1/2)は以下の通り。