特殊酸塩基触媒反応の加水分解速度が最小となるpH 95回薬剤師国家試験問167
95回薬剤師国家試験 問167
薬物Aは水素イオンと水酸化物イオンのみの触媒作用を受けて加水分解され、そのときの1次加水分解速度定数kは次式で表される。
k = kH・[ H+ ] +kOH・[ OH− ]
ここで、kHは水素イオンによる触媒反応の速度定数、kOHは水酸化物イオンによる触媒反応の速度定数である。
この薬物の pH 1.0と pH 11.0 におけるkはそれぞれ 0.0010 h−1と 0.10 h−1であった。この薬物の加水分解速度が最小となるpHに最も近い値はどれか。ただし、水のイオン積 Kw = 1.0 × 10−14 とし、pH以外の条件は変化しないものとする。
1 4.0
2 5.0
3 6.0
4 7.0
5 8.0
95回薬剤師国家試験 問167 解答解説
正解は2の5.0である。
本問は、特殊酸塩基反応に関する問題である。
特殊酸塩基反応については下記のリンク先を参照
特殊酸塩基反応の速度定数と直線の傾き 94回問167a
この薬物の加水分解は水素イオン(H+ )と水酸化物イオン(OH− )の両方の触媒作用を受ける。
よって、この薬物の加水分解速度が最小となるのは
kH [ H+ ]=kOH [ OH− ]
となる時であるので、その時の[ H+ ]を求めればよい。
そのためには、
まずkHとkOHを求める必要がある。
◆ pH1.0の時
k = kH [ H+ ] +kOH [ OH− ]
について、
pH1.0では、[ OH− ]は非常に小さく、
kOH [ OH− ]は無視できるので、
k = kH [ H+ ]
と考えられる。
pH1.0におけるkは0.0010 h−1であるので、
次式が成り立つ。
k = kH [ H+ ] より、
0.0010 h−1 = kH ・1.0×10−1mol/L
kH = 1.0×10−2L・mol −1・h −1
◆ pH11.0の時
k = kH [ H+ ] +kOH [ OH− ]
について、
pH11.0では、[ H+ ]は非常に小さく、
kH [ H+ ]は無視できるので、
k = kOH [ OH− ]
と考えられる。
pH11.0におけるkは0.10 h−1であるので、
次式が成り立つ。
なお、本問では、
[ OH− ] = Kw/ [ H+ ] = 1.0×10−14/ [ H+ ] である。
k = kOH [ OH− ] より、
0.10 h−1 = kOH ・1.0×10−14/ 1.0×10−11 ]
kOH = 1.0×102L・mol −1・h −1
◆ 加水分解速度が最小となるpHの計算
設問の薬物の加水分解速度が最小となるのは
kH [ H+ ]=kOH [ OH− ]
となる時であるので、その時の[ H+ ]を求める。
kH [ H+ ]=kOH [ OH− ] より、
1.0×10−2L・mol −1・h −1・[ H+ ]=1.0×102L・mol −1・h −1 ・1.0×10−14/ [ H+ ]
[ H+ ] 2 = 1.0×10−10・mol2・L −2
[ H+ ] = 1.0×10−5・mol・L −1
したがって、
この薬物の加水分解速度が最小となるpHは約5である。