擬0次反応の計算問題 93回薬剤師国家試験問166

93回薬剤師国家試験 問166
ある薬物1.25 gを水0.10 Lに懸濁し、一定温度下で全薬物濃度Cを測定したところ、図1に示すように実験開始5時間後までは直線的に減少した。
Cの値を時間に対して片対数プロットしたところ、図2に示すように5時間以降は直線となった。懸濁粒子の粒子径を変えて実験しても同じ実験結果が得られた。
この実験に関する記述のうち、正しいものはどれか。ただし、ln2=0.69とする。

 

93回薬剤師国家試験問166 懸濁液の反応速度と擬0次

 

a 実験開始5時間までは分解速度が溶解速度に比べて速い。
b 実験開始5時間以降の分解は1次速度過程に従い、その1次速度定数は0.05 hr−1である。
c この薬物の水に対する溶解度は5.0 g/Lである。
d Cが1.25 g/Lになるのは、実験開始9.6時間後である。

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93回薬剤師国家試験 問166 解答解説

 

93回薬剤師国家試験問166 懸濁液の反応速度と擬0次

 

◆ a,cについて
a × 実験開始5時間までは分解速度が溶解速度に比べて速い。
→ 〇 実験開始5時間までは溶解速度が分解速度に比べて速い。

 

c 〇 この薬物の水に対する溶解度は5.0 g/Lである。

 

図1において、実験開始から5時間までの所に着目すると、
時間に対する全薬物濃度Cのプロットが右下がりの直線になっている。
これより、実験開始から5時間までは0次反応に従い分解していると考えられる。

 

93回薬剤師国家試験問166 懸濁液の反応速度と擬0次

 

また、図2において、5時間以降の所に着目すると、
時間に対する濃度の片対数プロットが右下がりの直線になっている。
これより、5時間以降は1次反応に従い分解していると考えられる。

 

93回薬剤師国家試験問166 懸濁液の反応速度と擬0次

 

以上より、
設問の薬物は、本来、水中で1次反応に従い分解するが、
懸濁液において溶解速度が分解速度に比べて速く、
実験開始から5時間までは擬0次反応に従い分解したと考えられる。
5時間で全薬物濃度(溶解しているものと溶解していないものを合わせた濃度)は溶解度に等しくなり、
これ以降は1次反応に従い分解したと考えられる。

 

93回薬剤師国家試験問166 懸濁液の反応速度と擬0次

 

 

また、実験開始から5時間での全薬物濃度がこの薬物の溶解度であるため、
溶解度は5.0 g/Lだとわかる。

 

 

◆ bについて
b × 実験開始5時間以降の分解は1次速度過程に従い、その1次速度定数は0.05 hr−1である。

 

→ 〇 実験開始5時間以降の分解は1次速度過程に従い、その1次速度定数は0.3 hr−1である。

 

本問では、薬物の溶解度Csは5g/Lであり、
全薬物濃度が溶解度(5g/L)以上の時は擬0次反応で分解が進行し、
5時間で濃度=溶解度Csとなり、
それ以降、全薬物濃度が溶解度(5g/L)以下では1次反応で分解が進行する。

 

93回薬剤師国家試験問166 懸濁液の反応速度と擬0次

 

擬0次反応の反応速度(ν擬0)は次の@式で表される。
ν擬0 = k擬0 = k1・Cs …@
k擬0:擬0次反応速度定数
k1:1次反応速度定数 Cs:溶解度(飽和濃度)

 

擬0次反応の全薬物濃度Cと時間tの関係式として次のA式がある。
C = C0 − k擬0・t …A
C:時間tでの全薬物濃度 C 0:初期全薬物濃度

 

@式より、
k擬0 = k1・Cs なので、
A式は次のB式に変換される。
C = C0 − (k1・Cs)・t …B

 

本問では、B式に与えられた数値を代入し、
k1について解く。

 

問題文に「ある薬物1.25 gを水0.10 Lに懸濁し」とあるので、
初期全薬物濃度(C0)は、
C0 = 1.25g/0.1L = 12.5g/L
である。
また、溶解度(Cs)=5.0 g/L である。
実験開始から5時間(t=5hr)の数値をB式に代入して、
k1について解く。

 

C = C0 − (k1・Cs)・t …B
において、
t = 5hrの時、グラフよりC=5.0 g/Lであるので、
5.0 g/L = 12.5g/L − (k1・5.0 g/L)・5hr
k1 = 0.3hr−1

 

 

◆ dについて
d 〇 Cが1.25 g/Lになるのは、実験開始9.6時間後である。

 

実験開始5時間で全薬物濃度Cは5.0 g/Lとなり、
これ以降の分解は1次速度過程に従う。
1次反応における濃度と時間の関係式として次のC式がある。
lnC = lnC0 − k1・t …C
C:時間tでの全薬物濃度 C 0:初期濃度
k1:1次反応速度定数

 

本問では、C式にC=1.25を代入し、tについて解く。
初期濃度(C 0) = 5.0 g/L,k1 = 0.3hr−1
であるので、
lnC = lnC0 − k1・t …C
より、

 

93回薬剤師国家試験問166 懸濁液の反応速度と擬0次

 

実験開始5時間で全薬物濃度Cは5.0 g/Lとなり、
これ以降、分解は1次速度過程に従い、
4.6時間で濃度は1.25 g/Lになった。
以上より、
全薬物濃度Cが1.25 g/Lになるのは、
実験開始9.6時間後である。

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