擬0次反応の計算問題 90回薬剤師国家試験問22
90回薬剤師国家試験 問22
ある薬物の水溶液中における分解の1次速度定数は0.05hr−1で、 溶解度は1 w/v%である。溶解速度が分解速度に比べて充分に速い状態において、この薬物200mgを5 mLの水に懸濁させ、分解物の生成を時間の関数としてモニターしたところ、最初は直線的に増加したが、〔 〕時間をすぎると、分解物の生成はその直線からずれた。
〔 〕の中に入れるべき数値は次のどれか。
1 10
2 20
3 40
4 60
5 80
90回薬剤師国家試験 問22
正解は4の60である。
求める〔 〕時間をtCsとおく。
問題文に、
「最初は直線的に増加したが、〔 〕時間をすぎると、分解物の生成はその直線からずれた」とある。
この記述より、
設問の薬物は、本来、水中で1次反応に従い分解するが、
懸濁液において溶解速度が分解速度に比べて速く、
実験開始から時間tCsまでは擬0次反応に従い分解したと考えられる。
時間tCsで含量は溶解度Csに等しくなり、
これ以降は1次反応に従い分解したと考えられる。
擬0次反応の反応速度(ν擬0)は次の@式で表される。
ν擬0 = k擬0 = k1・Cs …@
k擬0:擬0次反応速度定数
k1:1次反応速度定数 Cs:溶解度(飽和濃度)
擬0次反応の含量Cと時間tの関係式として次のA式がある。
C = C0 − k擬0・t …A
C:時間tでの含量 C 0:初期含量
@式より、
k擬0 = k1・Cs なので、
A式は次のB式に変換される。
C = C0 − (k1・Cs)・t …B
本問では、薬物の含量Cが溶解度Csと等しくなる時間(tCs)について、
B式に与えられた数値を代入し、
tCsについて解く。
問題文に「薬物200mgを5 mLの水に懸濁させ」とあるので、
初期含量(C0)は、
C0 = 200mg/5mL = 4g/100mL = 4w/v%
である。
また、溶解度(Cs)は1 w/v% 、
1次速度定数(k1)は0.05hr−1である。
これらの数値をB式に代入し、
tCsについて解く。
C = C0 − (k1・Cs)・t …B
より、
1 w/v% = 4 w/v% − (0.05hr−1・1 w/v%)・tCs
tCs = 60hr