分液ロートによる抽出操作 100回薬剤師国家試験問101
第100回薬剤師国家試験 問101
有機化合物1〜5がそれぞれ100mg 溶解しているジエチルエーテル(エーテル)溶液100mL について、エーテルと同体積の各水溶液を用いて、分液ロートによる以下の抽出操作を行った。主としてエーテル層Aに含まれる有機化合物はどれか。1つ選びなさい。
第100回薬剤師国家試験 問101 解答解説
エーテル層Aに残留するのは5のジフェニルアミンだと考えられる。
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官能基を利用した分離精製(薬学これでOK!さん)
@ NaHCO3水溶液を用いる分液操作
NaHCO3水溶液は弱塩基性である。よって、酸性物質である1のカルボン酸か2のフェノールは水層に移る可能性がある。
酸性物質の酸性度の強さは強い方から、無機酸>カルボン酸>炭酸>フェノール>チオール>アルコール である。
1の安息香酸と2のフェノールではカルボン酸の方が酸性度は強いので、ここでどちらかが水層に移行するというのなら、1の安息香酸だと考えられる。
安息香酸はNaHCO3水溶液程度の弱めな塩基性条件下でもCOOHがH+を放出して陰イオン形(COO:−)となりやすいため水層に移行すると考える。
2のフェノールは弱酸なので、塩基性条件下でもNaHCO3水溶液のpHではH+を放出して陰イオン形にはなりにくいのであろう。
さらに、3のエチレングリコールは炭素数の割に極性基の−OHが多いため水溶性であるため、ここで水層に分離される。
4,5は酸ではないので、pHの高い塩基性条件下ではH+を受け取れないため分子形であり、エーテル層に残留する。
以上のことから、NaHCO3水溶液を用いる分液操作により、水層に1の安息香酸と3のエチレングリコールが分離され、ジエチルエーテル層に2,4,5が残留したと考えられる。
A NaOH水溶液を用いる分液操作
NaOH水溶液は強塩基性である。かなり高いpHになるので、2のフェノールが弱酸でもH+を放出して陰イオン形(Ph−O:‐)になって水層に移ると考えられる。
以上のことから、NaOH水溶液を用いる分液操作により、水層に2のフェノールが分離され、ジエチルエーテル層に4,5が残留したと考えられる。
B 塩酸を用いる分液操作
4(アニリン)は塩基性物質なので、塩酸酸性条件下というpHが低い環境ではアミンの窒素原子(N:)が非共有電子対を供与してH+を受け取って陽イオン形(NH+)となり、水層に移行する。
5(ジフェニルアミン)はN原子を有するので一見塩基だと捉えそうだが、N原子が共役系の一員となっており、Nの有する非共有電子対は共役系を非局在化することから相手に供与されにくい。
よって、5(ジフェニルアミン)は、N原子を有するが塩基性をほとんど示さないため塩酸酸性条件下でも分子形であり、なおかつ、構造から疎水性が高い(親水性が低い)と考えられる。
以上のことから、塩酸を用いる分液操作により、4が水層に移行し、エーテル層Aに5が残留したと考えられる。
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