酸性度と共役塩基の共鳴安定化 アルケン・共役ジエンのアリル位の酸性度 第86回問10c

第86回薬剤師国家試験 問10c
不飽和炭化水素に関する記述の正誤を判定してみよう。

 

c propeneのメチル基水素は1,4-pentadieneの3位の炭素上の水素よりも酸性度が強い。

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薬剤師国家試験過去問題集 化学 アルケン

 

第86回薬剤師国家試験 問10c 解答解説

 

c × propeneのメチル基水素は1,4-pentadieneの3位の炭素上の水素よりも酸性度が強い。
→ 〇 propeneのメチル基水素は1,4-pentadieneの3位の炭素上の水素よりも酸性度が弱い。

 

酸の酸性度とその共役塩基の安定性・塩基性度との関係は下記の通り。

 

・酸の酸性が強い⇔共役塩基の安定性が高い、または、塩基性が弱い

 

・酸の酸性が弱い⇔共役塩基の安定性が低い、または、塩基性が強い

 

化合物のある水素の酸性度について、プロトンが解離して生成する共役塩基の負電荷の非局在化の範囲が広いほど(負電荷の分散する範囲が広いほど)、共役塩基の安定性は高く、その水素の酸性度は強い。

 

本問では炭化水素であるCHの酸性度の順序付けを行うが、それには共役塩基の安定性を比較すればよい。
炭化水素がH+を放出して酸として働く時、これを炭素酸という。
炭素酸(CH)はH+を放出してC:‐となるので、C:‐が炭素酸の共役塩基である。
共役塩基であるC:‐の負電荷が分散されて安定性が高いほど、元の炭素酸(HC)の酸性度は強いことになる。

 

本問での共役塩基の安定性の比較においては、
共役塩基の負電荷の共鳴による非局在化がポイントである。
共鳴によって負電荷が非局在化する範囲が広いほど、共役塩基の安定性は高い。

 

アルケン・共役ジエンのアリル位の水素の酸性度 86回問10c

 

propeneのメチル基からH+が解離して生成する共役塩基と1,4-pentadieneの3位炭素からH+が解離して生成する共役塩基を比べると、
1,4-pentadieneの3位の共役塩基の方が共役系は長く、
共鳴により負電荷の非局在化する範囲は広いため、
安定性は高いと考えられる。
よって、1,4-pentadieneの3位炭素の水素はpropeneのメチル基水素よりも酸性度が高いと考えられる。

 

 

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