エタン,トルエン,アセトニトリルの共役塩基と酸性度の比較 薬剤師国家試験94回問4b
第94回薬剤師国家試験 問4b
下記の3つの物質を酸性度の強いものから並べなさい。
H3C−C6H5
H3C−CN
H3C−CH3
第94回薬剤師国家試験 問4b 解答解説
酸性度の強いものから、
H3C−CN >
H3C−C6H5 >
H3C−CH3
である。
化合物のある水素の酸性度について、プロトンが解離して生成する共役塩基の負電荷の非局在化の範囲が広いほど(負電荷の分散する範囲が広いほど)、共役塩基の安定性は高く、その水素の酸性度は強い。
本問では各物質の炭素酸としての酸性度の比較を行うが、
それには共役塩基の安定性を比較する。
本問での共役塩基の安定性の比較においては、
共役塩基の負電荷の共鳴による非局在化がポイントである。
詳細は下記のリンク先を参照
酸性度と共役塩基の共鳴安定化 第86回問10c
共役塩基の負電荷が非局在化する度合いが高いほど、共役塩基の安定性は高い。
以下、設問の各物質の酸性度について、
共役塩基の負電荷の非局在化と安定性の観点から比較する。
◆ H3C−CH3について
H3C−CH3 (エタン)の共役塩基は、負電荷が局在するので安定性が低い。
また、H3C−CH3の共役塩基は、CH3がアルキル基として電子供与性電子効果を与えることにより、カルボアニオンの電子密度を上昇させて塩基性が強まっているとも考えられる。
以上のことから、H3C−CH3の酸性度は弱い。
◆ H3C−C6H5について
H3C−C6H5 (トルエン)の共役塩基は、
共鳴により負電荷がベンゼン環に非局在化されるので、
H3C−CH3の共役塩基よりも安定性は高い。
よって、H3C−C6H5の酸性度はH3C−CH3よりも強い。
◆ H3C−CNについて
−NO2や−CNのようなヘテロ原子の不飽和結合を含む置換基は、
電子求引性誘起効果と電子求引性共鳴効果より強力な電子求引性電子効果を与える。
よって、カルボアニオンに対する共鳴安定化効果は、
−NO2や−CNの方がフェニル基よりも大きい。
したがって、H3C−CNの酸性度はH3C−C6H5よりも強い。
★参考外部サイトリンク
酸・塩基の定義(猫でもわかる有機化学さん)