ニトロ基,メトキシ基の誘起効果と酢酸誘導体の酸性度 薬剤師国家試験89回問11d

第89回薬剤師国家試験 問11d
メトキシ基及びニトロ基による置換基効果について、
下記A〜Cのカルボン酸を酸性の強いものから並べなさい。
ニトロ基,メトキシ基の誘起効果と酢酸誘導体の酸性度 薬剤師国家試験89回問11d

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第89回薬剤師国家試験 問11d 解答解説
酸性度の強いものから、

 

ニトロ基,メトキシ基の誘起効果と酢酸誘導体の酸性度 薬剤師国家試験89回問11d

 

である。

 

 

化合物の酸性度とその共役塩基の塩基性度の関係は下記の通り。

 

酸性が強い⇔共役塩基の負電荷の安定性が高く塩基性が弱い
酸性が弱い⇔共役塩基の負電荷の安定性が低く塩基性が強い

 

よって、酸の酸性度を比較するには、その共役塩基の負電荷の安定性・塩基性を比較すれば良い。

 

 

本問では、置換基による電子効果がカルボン酸の酸性度に与える影響を考える。

 

置換基の電子効果については
下記のリンク先を参照
誘起効果・共鳴効果とは

 

置換基の電子効果(電子供与性・電子求引性)と共役塩基(A:−)の塩基性度および酸(HA)の酸性度の関係は下記の通りである。

 

・ 置換基により電子供与性電子効果が与えられる場合、共役塩基(A:−)の負電荷の安定性は低く塩基性は強くなるので、酸(HA)の酸性度は弱くなる(酸解離定数Kaは小さく、pKaは大きくなる)。

 

ニトロ基,メトキシ基の誘起効果と酢酸誘導体の酸性度 薬剤師国家試験89回問11d

 

 

・ 置換基により電子求引性電子効果が与えられる場合、共役塩基(A:−)の負電荷が分散されて安定性が高くなり塩基性が弱くなるので、酸(HA)の酸性度は強くなる(Kaは大きく、pKaは小さくなる)。

 

ニトロ基,メトキシ基の誘起効果と酢酸誘導体の酸性度 薬剤師国家試験89回問11d

 

 

本問では、sp3炭素に置換基が結合することによる物質の酸性度の変化を考える。
置換基による電子効果について、sp3炭素に置換している場合は誘起効果のみを考えればよい。

 

ニトロ基,メトキシ基の誘起効果と酢酸誘導体の酸性度 薬剤師国家試験89回問11d

 

 

本問のカルボン酸について、
ニトロ基,メトキシ基の誘起効果と酢酸誘導体の酸性度 薬剤師国家試験89回問11d

 

Bではsp3炭素にメトキシ基(−OCH3)が置換し、
Cではsp3炭素にニトロ基(−NO2)が置換している。

 

メトキシ基はsp3炭素に対して電子求引性誘起効果を与え、共役塩基の負電荷の安定性を高め、カルボン酸の酸性度を高める。

 

ニトロ基,メトキシ基の誘起効果と酢酸誘導体の酸性度 薬剤師国家試験89回問11d

 

 

ニトロ基はsp3炭素に対して電子求引性誘起効果を与え、共役塩基の負電荷の安定性を高め、カルボン酸の酸性度を高める。

 

ニトロ基,メトキシ基の誘起効果と酢酸誘導体の酸性度 薬剤師国家試験89回問11d

 

 

結論を先に述べると、ニトロ基の方がメトキシ基よりも電子求引性電子効果は強いので、ニトロ基が置換するCの方が共役塩基の負電荷の安定性は高く、カルボン酸の酸性度は強い。

 

電気陰性度の大きい原子が多く結合するほど電子求引性誘起効果は強くなる。
メトキシ基とニトロ基のそれぞれの構成原子を比較すると、ニトロ基の方が電気陰性度の大きい原子を数多く含むため、相対的に電子求引性誘起効果は強いと考えられる。

 

 

以上のことから、
酸性度の強いものから、
ニトロ基,メトキシ基の誘起効果と酢酸誘導体の酸性度 薬剤師国家試験89回問11d

 

である。

 

 

★参考外部サイトリンク
酸・塩基の定義(猫でもわかる有機化学さん)

 

酸・塩基の平衡(猫でもわかる有機化学さん)

 

酸性の強弱(猫でもわかる有機化学さん)

 

酸性度の概要(薬学これでOK!さん)

 

誘起効果・共鳴効果による酸性度の変化(薬学これでOK!さん)

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